今や「推し活」という言葉が日常会話に定着し、Z世代から50代以上まで幅広い世代に浸透しています。この現象は、単なるファン文化の枠を超え、各ジャンルの市場規模を押し上げており、多くの業種にとって重要なビジネスチャンスとなっています。本記事では、推し活の基本概念から多様な活動形態、さらに各ジャンル別の特徴とビジネス展開のヒントまで、ビジネス展開に役立つ情報を紹介します。


推し活とは

推し活とは、自分が特に支持するイチオシの対象を応援する活動全般を指します。従来はアイドルやアニメ・漫画のキャラクターが中心でしたが、最近では音楽アーティスト、スポーツ選手、俳優、さらには動物、鉄道、建築物まで、応援の対象が大きく広がっています。

推し活は、応援対象への支援の気持ちを込めた消費である「応援消費」という経済活動の一形態とも捉えられます。推し活の市場規模を直接測定した統計はありませんが、関連する指標として、矢野経済研究所の『「オタク」市場に関する調査(2024年調査)』が参考になるでしょう。同調査によれば、オタク市場は、2023年度に9,700億円に達し、2024年度には1兆円を突破する見込みです。この傾向が示す通り、推し活は、10代の若者から50、60代のシニア層まで、世代を超えて幅広く浸透している点に特徴があります。

推し活の概要や応援消費については、以下の記事でくわしく解説しています。

参考:「オタク」市場に関する調査を実施(2024年) | ニュース・トピックス | 市場調査とマーケティングの矢野経済研究所


推し活の具体的な活動

推し活にはさまざまな形があります。推し活の具体的な活動を7つの種類に分類し、それぞれでどのような活動が行われているのかを紹介します。

公式グッズ購入型

推し活の最も一般的な形態です。公式商品や関連グッズを購入することで推しを応援する活動です。書籍や音楽・映像作品の購入はもちろん、グッズ、記念品など推しに関連する公式アイテムを集めることが中心となります。推し活初心者にとって取り組みやすい形態で、公式サイトやイベント会場、オンラインショップなどで気軽に購入できます。

デジタルコンテンツ支援型

オンライン上で行われる支援活動です。デジタルグッズの購入、配信サービスでの投げ銭、有料会員サービスへの加入などが代表例です。物理的な制約を受けずにスマートフォンやPCから即時支援できる利便性が最大の特徴です。

イベント参加・現地体験型

展示会、ライブ、公式イベントへの参加や、作品の舞台やゆかりの地を訪れる「聖地巡礼」など、実際に足を運んで体験する形態です。物品の所有ではなく体験や経験に価値を見出す消費行動「コト消費」の典型的な例といえるでしょう。

情報をいち早く入手するため公式会員になったり、遠方での開催でも足を運んだりと、直接体験することを重視します。現地でしか得られない体験や、同じ興味を持つ人々との交流を通じて、推しへの理解や愛着を深めていきます。

聖地巡礼やコト消費については、以下の記事でくわしく解説しています。

SNS発信型

SNS(ソーシャルメディア)を活用して推しに関する情報を発信・拡散する活動です。公式アカウントのフォローや、推し専用のアカウントでの情報共有、ハッシュタグを使った応援など、オンライン上での存在感を高める活動を行います。推しの魅力を広める伝道師的な役割を担い、同じ興味を持つ人々とつながりながら推しの認知拡大に貢献します。

クリエイティブ制作型

自らの創作活動を通じて推しへの愛を表現する形態です。イラストや小説、動画編集、模型製作、写真撮影など、自分のスキルを活かした創作物を通して推しを表現し、共有します。オンラインプラットフォームや同人イベントで作品を発表することで、推しの魅力を独自の視点から伝え、他のファンとの共感を生み出します。

コミュニティ形成型

同じ推しを持つ人々との交流を中心とした活動です。オフラインでの交流会参加や、オンラインコミュニティでの情報交換、共同企画の立案など、共通の興味を持つ人々とのつながりを通じて推し活を楽しみます。

コレクション型

推し関連のアイテムを系統的に収集する活動です。限定品やシリーズものの網羅的な収集、希少アイテムの入手を目指すなど、コレクション自体を目的化した楽しみ方をします。専用の空間(いわゆる「推し部屋」)でのディスプレイや保管方法にもこだわり、収集品を通して推しとの絆を感じる活動です。

多くのファンは、これらを複数組み合わせて活動しています。また、推しの対象が人物、作品、場所、乗り物、活動など何であれ、これらの形態に当てはめて楽しむことができます。


推し活対象ジャンル別の特徴 

推し活の形態は、応援対象となるジャンルによっても特徴が異なります。ここでは、推し活対象ジャンルごとの特徴を紹介します。

音楽系(アイドル・アーティスト)の推し活

音楽系の推し活は、CD・DVDなどの作品購入やグッズ収集に加え、ライブ参加が中心的な活動です。ペンライトを使った応援スタイルや、グループ全体を応援する「箱推し」と特定メンバーを応援する「単推し」という独自の文化が発展しています。特にK-POPファンの間では、国境を越えた応援活動も活発で、翻訳アカウント運営といったSNSを活用した情報共有も盛んです。

アニメ・漫画・ゲームの推し活

アニメや漫画、ゲームキャラクターを対象とした推し活では、グッズコレクションに加え、二次創作や同人誌制作、コスプレなどクリエイティブ活動が盛んです。「痛バッグ」や「痛車」など推しキャラクターを日常に取り入れる文化や、ソーシャルゲームで課金して推しキャラクターを入手・育成する活動も一般的です。また、コミケなどの同人誌即売会への参加も重要な活動の一つであり、アクリルスタンドや缶バッジといった同人グッズの制作・交換・購入を通じて推しへの愛情を表現します。

即売会や同人グッズについては、以下の記事でくわしく解説しています。

スポーツ関連の推し活

スポーツ選手やチームの推し活では、ユニフォームや応援グッズの購入、試合観戦、応援歌の合唱などが中心です。選手のプレーや成績に関する分析、長期的な成長を見守る楽しみがあり、データ重視の応援スタイルも特徴の一つです。地域密着型チームの場合は、地元愛と結びついたコミュニティ形成も見られます。

カルチャー系(鉄道・建築物・伝統芸能)の推し活

鉄道、建築物、仏像、刀剣などを対象とした推し活では、写真撮影や詳細な情報収集、現地訪問が主な活動となります。鉄道では「乗り鉄」「撮り鉄」「模型鉄」など楽しみ方によるカテゴリー分化が進んでおり、文化財の推し活では、保存・修復のための寄付といった支援活動も行われています。こうした推し活は、地域観光の活性化にも貢献しており、新たな交流人口の創出という社会的意義も注目されています。

地域観光の活性化については、以下の記事でくわしく解説しています。


推し活グッズ制作で押さえるべきポイント

推し活市場の拡大に伴い、グッズ制作・販売ビジネスも注目を集めています。缶バッジやアクリルスタンド、アパレル商品、トートバッグなど、幅広いジャンルがあります。ここでは、推し活ファンのニーズを満たす魅力的なグッズ制作のポイントを解説します。

ターゲット層に合わせた価格設定

世代によって購買力と重視する価値が異なるため、ターゲット層の年齢や予算に適した価格戦略が必要です。例えば、Z世代は比較的低価格帯のアイテムを多数購入する傾向がある一方、30〜40代は少数でも品質の高い商品を選ぶ傾向があります。在庫リスクを低減し、安定的にビジネスを継続するために、市場調査に基づく適切な価格設定を行いましょう。

多様なファン層に対応する柔軟な生産体制

推し活市場では、メジャーな人気コンテンツから小規模なニッチ作品まで、ファン層の規模や特性が多岐にわたります。ビジネスとして成功するには、この多様性に応じた柔軟な生産体制が不可欠です。

大手人気作品では大量生産によるコスト効率化が有効ですが、新興クリエイターや専門性の高いジャンルでは小ロット生産が適しています。例えば、缶バッジは初期投資を抑えて少量生産できるため、市場テストや多様なバリエーション展開に適したアイテムだといえるでしょう。

小ロット生産については、以下の記事でくわしく解説しています。


emoji_objects 多様化する推し活に今後も注目

推し活の7つの活動形態は、必ずしも独立したものではありません。多くのファンは複数の形態を組み合わせて推し活を楽しんでいます。また、音楽、アニメ、スポーツ、カルチャー系など、ジャンルによっても特徴的な活動スタイルが発展しています。今後も推し活市場はさらに多様化し、新たな形態や表現方法が生まれる可能性があるでしょう。

推し活グッズの展開を検討する際には、缶バッジはぜひ取り入れたいアイテムのひとつです。「バッジマンネット」では、各種マシンとパーツをワンストップで取り揃えており、ビジネスの規模や目的に合わせてお選びいただけます。具体的な製作方法については、バッジマンネットにてくわしくご紹介していますので、ご覧になったうえで、お気軽にお問い合わせください。