インバウンドが回復傾向を見せるなか、日本の地方の魅力が新たに注目されています。観光振興は各エリアに観光客を促すための取り組みとして、地方再生の大きな柱となっています。成功させるためには、その土地ならではの文化や景観をどのように活かし、活性化につなげるのかが課題です。

今回は観光振興の概要から、成功ポイントや取り組み例を紹介します。

観光振興とは?

初めに観光振興の基本的知識を解説します。

観光振興の概要

観光振興とは、地域の観光を盛り立てて、活性化や発展につなげる取り組みのことです。その土地ならではの景観、文化、歴史などにふれてもらうことで、地域の魅力を伝え、多くの観光客を呼び込むことを目指します。

観光振興の目的

観光振興の具体的な目的としては、主に以下のようなものがあげられます。

  • 経済成長
    観光産業は地域経済に大きな影響を与える重要なセクターです。観光業の活性化によって、地域の経済成長を促すことが期待されます。
  • 雇用創出
    宿泊や飲食、物販など観光業は多くの人々に雇用の場を提供します。観光地や観光資源の魅力を高め、多くの集客を得ることで現地の雇用機会を増やし、地域の雇用問題の解決に貢献します。
  • 地域の活性化
    観光客の増加により、地域の交流や文化交流が促進され、地域の活気が高まります。同時に観光資源や文化遺産の保護・活用により、地域のアイデンティティや誇りを強化する効果も期待できます。
  • 地域振興
    多くの人が訪れ、注目が集まると、地域の交通インフラや観光施設の整備が進みます。地域の生活インフラやサービスの充実が図られ、地域住民の生活環境向上にもつながります。

観光振興を成功させるには?

観光振興を成功させるために、押さえるべきポイントは以下のとおりです。

地域の魅力の最大化

その土地に潜在する独自性や強みを見極め、観光客を誘引する目玉を創造することで、外部からの注目を集められます。「その場所に行きたい」という魅力を最大化できる方向性を見出すことが大切です。

自走を意識した計画を立案

コラボレーションは大きな力を生み出しますが、スタート段階では、まずは自社のみで可能なアイデアから考えます。企画の規模にしたがって、次第に周囲を巻き込んでいくように進められるのが理想的です。初めから他者を頼ってしまうと、場合によってはとん挫するリスクが高まります。

達成すべき目標・水準の設定を明確にする

どのような施策においても、実行のあとには検証が必要です。数値化、可視化できる目標があると、改善やさらなる飛躍に向けたステップが明確になります。

継続性への意識を持つ

観光振興は、一度のイベントやキャンペーンで終わるものではありません。自社事業として成長を続けられるよう、初期段階から強い意識を持つことが求められます。そのためにも、費用対効果を考えて無理のない計画の立案を意識する必要があります。

協力者との緊密なコミュニケーション

例えば、異業種間や公的組織との連携を取る場合には、十分に相互理解を持ちながら実施する必要があります。協力者とは緊密にコミュニケーションを取り、認識の違いが発生しないよう注意することが大切です。

観光振興の実例紹介

観光振興に関連する実際の取り組みや成功例を紹介します。

鉄道コンテツを活用した「安中・磯辺・横川クイズラリー」

群馬県安中市の観光機構と、JR東日本高崎支社が協働し、鉄道コンテンツを活用した『安中エリア周遊クイズラリー・イベント』を開催しました。

テレビアニメで人気を博した『新幹線変形ロボ シンカリオン Z」を活用し、実施された鉄道コンテンツツーリズム企画です。地域×鉄道コンテンツによる、観光誘致の強化に注目が集まりました。

シンカリオンZをテーマとしたクイズラリーの企画・制作、アニメ本編の重要拠点として設定されている鉄道文化むらでのイベントなど、コンテンツを十分に活かした内容となっています。

クイズラリーのイベントをARフォトスポットなどのキャンペーンと連動させ、アニメ聖地巡礼と安中エリアの観光周遊につなげることを目的とした本企画は、大きな集客効果につながりました。

走るレストラン列車「TOHOKU EMOTION」

列車全体をレストラン空間として、東北の食材を使用したコース料理を提供するイベントです。走行区間は、JR八戸駅〜久慈駅間で、美しい三陸の景観とともにグルメを味わいます。

列車の外観デザインは「走るレストラン」をイメージした大胆なデザインとなっており、車内は個室とオープンダイニングの2種の席が設置されています。ライブキッチンでは臨場感ある調理シーンが見られるつくりとなっているため、さらに気分が高まります。

料理は三陸のホタテ、姫神サーモンなど地元の豊富な食材を使い、メニュー内容は年4回更新されます。さらに、監修シェフは年間で2名採用し、担当シェフが年2回替わるため、何回でも楽しめるのも大きなポイントです。東北にゆかりのある有名シェフを招へいしていることも話題を呼びました。

かつて文豪もその美しさを評したという種差海岸や、「ウミネコの繁殖地」として国の天然記念物に指定されている蕪島、幕末では異国船の監視、太平洋戦争では日本軍の監視所として使われていた葦毛崎展望台など、八戸~久慈というロケーションを存分に活かしたイベントとして大人気です。

オリジナルグッズ販売の3事例

  • 車両の顔をスケッチしたクリアファイル「三セク鉄道物語」
    日本美術院「特待」で、鎌倉市在住の画家である村田林藏氏による、第三セクター鉄道40 社の車両の「顔」のスケッチをもとにしたクリアファイルが制作されました。三セク鉄道応援、災害による被害を受けた「南阿蘇鉄道」および「くま川鉄道」の復旧応援として展開された企画です。
  • 石を缶詰にして売る「銚子電気鉄道」
    「ぬれ煎餅」などの食品販売に加え、鉄道グッズなどの販売も行っていることで知られるのが「銚子電気鉄道」です。同鉄道の駅ではあえて「硬券」を売り出しています。なかでも銚子行きの乗車券は「上り銚子(調子)」として発売し、コレクターに人気です。
    さらに線路の石を缶詰にして販売するという、思い切ったアイデア商品も好調です。銚子電鉄だけではなく、「天竜浜名湖鉄道」「真岡鐵道」「えちごトキめき鉄道」「若桜鉄道」といった第三セクター各社が手をたずさえ、銚子電鉄とほか2社の石(真岡鐵道は石炭)をそれぞれ缶詰にしてセットで通販しています。
  • 手のひらサイズの缶バッジ「まちづくり木曽福島」
    長野県木曽町では、困っている外国人観光客を手助けする意思を示す缶バッジ「木曽福島道しるべ」を作成して観光振興に活用しています。このバッジを身に付け、困っている外国人に気軽に声かけをすることで、もてなしの気持ちを町ぐるみで表します。住民の温かさを伝えながら、木曽福島地区を訪れる外国人が増えることを期待しています。
    缶バッジには「WELCOME TO KISO PLEASE FEEL FREE TO ASK(木曽へようこそ 気楽に話し掛けて)」と記載されています。種類は住民が外国人と話す姿が描かれた4つの絵柄、色は黄と黄緑の2つで、計1,000個作成されました。一般住民を巻き込んだ観光振興の例として話題となっています。
  • 駅員さんがつくった「東武北千住駅管区オリジナル電車缶バッジ」
    東武線を走る電車たちが、写真とオリジナルイラストで缶バッジになって登場し、鉄道愛好家やコレクターを魅了しています。駅コンコースのトイカプセル販売機で発売しており、1回200円(税込)と気軽に購入できるのもポイントです。

全国の三セク鉄道による「鉄印帳」

第三セクター鉄道等協議会に加盟する鉄道会社と関係会社が連携し、鉄道版の御朱印帳を持って各地を巡ってもらおうという企画です。40社の鉄道会社がオリジナル「鉄印」を作成し、訪れた人に駅の窓口で記帳します。

企画のスタート以来、鉄道ファン以外からも大きな反響を呼び、発売と同時に鉄印帳が完売する鉄道会社が続出しています。

鉄印帳については以下の記事で詳しく取り上げています。

※同月納品記事「鉄印帳とは? ビジネスアイデアを喚起する成功例も解説」へリンク

観光振興に向けて「その土地ならでは」を掘り起こそう

観光振興では自社の得意分野と、対象エリアの面白みや魅力の掘り起こしをかけ合わせながら、独自の手法を見出す必要があります。初めは小規模でも社会の注目を集められれば、全国規模の集客につながる可能性があります。

観光の楽しみは、そこでしか見られない風景や得られない体験、手に入れられないものがあるのが魅力でもあります。オリジナルグッズの販売も、観光振興に効果的な施策です。事例でも紹介したように、鉄道会社オリジナルのグッズはとても人気があり、なかでも缶バッジはバリエーションも豊富で価格帯も手ごろなため、コレクションを求めて現地を訪れるファンも少なくありません。

観光振興の一環として缶バッジ製作を検討する際には、優れた品質のマシンとパーツがそろうバッジマンネットをぜひご活用ください。