近年、地域の観光振興において「アニメツーリズム」が注目を集めています。従来の観光資源に加えて、アニメコンテンツを活用することで新しい客層を獲得し、持続可能な地域振興を実現する地域が増えています。本記事では、アニメツーリズムの基本から推進するメリット、成功事例、推進にあたってのポイントまで、幅広く解説します。


アニメツーリズムとは

アニメツーリズムとは、アニメや漫画作品の舞台となった場所や、作品に関連する施設・建造物を訪れる観光形態です。

アニメファンの間では「聖地巡礼」とも呼ばれ、作品の世界観を現実の場所で体験することに大きな価値を見出す観光スタイルです。映画、テレビドラマ、ゲーム、音楽、漫画、小説などの作品の舞台を訪れる観光スタイルである「コンテンツツーリズム」の一種といえます。

近年の「推し活」ブームを受けて人気が高まっており、キャラクターや作品への愛着が地域への関心へと発展する現象が注目されています。

聖地巡礼や推し活については、「聖地巡礼とは? ビジネスとして成功につなげるためのお役立ち情報を紹介」「推し活の市場規模は?最新動向から基礎知識、グッズビジネスに役立つ情報も」でくわしく解説しています。


アニメツーリズムが注目される理由

アニメツーリズムが注目される理由は次の通りです。

クールジャパン戦略との連携

内閣府は「新たなクールジャパン戦略」(令和6年6月発表)に基づき、アニメやマンガを活用して日本の魅力を世界に発信し、インバウンドの拡大を目指しています。これらのコンテンツは、訪日への関心を高める「入口」として期待されています。

参考:クールジャパン戦略 : 知的財産戦略推進事務局 – 内閣府

また、2016年には出版業界や自治体など多様な企業や団体が中心となって一般社団法人アニメツーリズム協会が設立されました。同協会は、「世界から選ばれる地域と日本」をモットーに、アニメを活用した観光地域づくりを推進しています。毎年国内外のファン投票をもとに選定される「訪れてみたい日本のアニメ聖地88」は、公式な聖地リストとして注目されています。

参考:一般社団法人アニメツーリズム協会

インバウンドについては、「インバウンド需要とは? 注目される理由や取り込むポイントを解説」「インバウンドビジネスとは?最新データやジャンル、展開時のポイントを解説」でくわしく解説しています。

地方創生への期待 

人口減少に悩む地方自治体にとって、アニメツーリズムは新たな観光客層の開拓と地域経済の活性化を同時に実現する有効な手段として期待されています。従来の観光振興では、観光資源の掘り起こしや整備に多額の投資と長期間の準備が必要でした。アニメツーリズムは、作品のファン層というターゲットが明確で、既存の街並みや自然環境を活用できるため、比較的短期間で観光客の誘致を進めることができます。

地域の観光振興については、「観光資源とは?その種類や地域の魅力を引き出す活用のコツ・事例を解説」「観光振興とは? 地域を盛り立てながら収益を拡大するための取り組み例を紹介」でくわしく解説しています。


アニメツーリズム推進のメリット

アニメツーリズムの推進は、地域にさまざまなメリットをもたらします。

観光客数の増加

アニメツーリズムの推進により、地域への訪問者数が大幅に増加する効果が期待されます。観光客の増加は、宿泊や飲食、土産物やグッズなどの物販、さらには地方の鉄道・バス路線といった公共交通にまで、幅広い経済効果をもたらします。

日本政策投資銀行のレポート「コンテンツと地域活性化」(2017年)によると、『らき☆すた』の舞台となった埼玉県久喜市では、放映前の2007年には13万人だった鷲宮神社の初詣参拝者数が、2010年には45万人へと増加し、テレビ放映以来の10年間で約31億円の経済波及効果をもたらしています。

参考:コンテンツと地域活性化(2017年)|日本政策投資銀行 [PDF]

地域雇用の創出

観光客の増加に伴い、宿泊施設や飲食店、物品販売、観光案内など多様な分野での雇用創出効果が生まれます。グッズ企画・制作、イベント運営など、アニメツーリズム特有の新たな業務も発生し、地域経済全体の雇用機会拡大に寄与することが期待されます。

インバウンド観光客の誘致

海外からの観光客にとっても、日本のアニメ作品の舞台は大きな魅力となっています。日本のアニメは世界的に高い人気を誇り、特に動画配信サービスの普及により、アジア圏だけでなく欧米や中東でもファン層が拡大しています。

日本のアニメ人気については、「サウジアラビアでアニメ人気が急上昇!最新動向とビジネス上の注意点とは」「中国で人気のACGとは?アニメ・コミック・ゲーム市場の特徴やトレンドを解説」でくわしく解説しています。

観光庁の「インバウンド消費動向調査(2024年年次報告書)」 によると、訪日外国人の8.1%が日本滞在中に「映画・アニメゆかりの地を訪問」しており、聖地巡礼者数は299万人にのぼると推計されています。また、11.8%が次回の訪日時に聖地巡礼を希望していることから、継続的なインバウンド需要の拡大が期待できます。

地域への愛着の醸成

アニメツーリズムは、訪問者と地域の間に深い結びつきを生み出す特徴があります。実際の風景や地域の人々と触れ合うことで、ファンは作品への愛着だけでなく、その土地自体への親しみや愛着を抱くようになります。この愛着は一過性の観光とは異なり、継続的な地域への関心や再訪問さらには地域を支える応援消費につながる重要な要素となっています。

応援消費については、「応援消費とは?特徴や種類、ビジネスにつなげるポイントを解説」でくわしく解説しています。


アニメツーリズムの成功事例 

「ガールズ&パンツァー」(茨城県大洗町)

アニメ「ガールズ&パンツァー」の舞台となった茨城県大洗町では、町を挙げて作品とのコラボレーションを進めています。作品に登場する曲がり松商店街では、キャラクターパネルの設置や限定グッズの販売、聖地巡礼マップの配布などを行い、多くのファンが訪れています。
また、町のイベントにあわせて声優のトークショーや登場人物の誕生日イベントなども開催され、来訪者を楽しませています。毎年11月に開催される「あんこう祭」では、アニメ放送前の約3万人から2016年には約13万人と、来場者が4倍以上に増加しました。

参考:ガールズ&パンツァー 最終章 | animetourism88

「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」(埼玉県秩父市)

秩父市や観光協会、鉄道会社などで構成された「秩父アニメツーリズム実行委員会」が設立され、アニメ放映前から聖地巡礼マップを作成するなど迅速に対応しました。マップ作成では「作品の世界観を壊さない」ことを徹底し、アニメに関係ない観光情報は一切掲載しないこだわりを貫いています。

また、伝統的な祭事とのコラボといった地域文化とアニメの融合を実現し、若者を中心とした継続的な観光客獲得に成功しています。

参考:あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。 | animetourism88


アニメツーリズム推進で押さえるべきポイント 

アニメツーリズムを効果的に推進するためのポイントを紹介します。

版元・制作会社との協力体制の構築

アニメツーリズムを成功させるためには、IP(知的財産)を持つ版元・制作会社との良好な協力関係の構築が不可欠です。キャラクターやロゴの使用許可、オリジナルグッズの企画・制作、イベント開催時の版権処理など、適切な手続きを経ることで地域が安心してコンテンツを活用できる環境が整います。また、作品の世界観を尊重し、制作者の意図や作品性を大切にする姿勢を示すことで、制作側との信頼関係が深まり、双方にメリットのある持続的な連携が可能となります。

IPについては、「IPビジネスにアニメ業界が注目!基本から成功へのポイントまでを解説」でくわしく解説しています。

ファンの意見に耳を傾ける

ファンの声を積極的に聞き取り、それを地域の取り組みに反映させることが重要です。

成功事例では、商工会や地域団体がファンからの意見やアイデアを直接ヒアリングし、それを基にファンが喜ぶオリジナルグッズやイベントを企画・実行しています。

このようなファンとの対話を通じて、単なる一過性の観光ではなく、ファンが地域に愛着を持ち継続的に関わる関係性が構築されます。

アニメのキャラクターグッズについては「アニメ・漫画やキャラクターのグッズの種類や製作のポイントを紹介」でくわしく解説しています。

 地域住民への配慮

人気作品の聖地では、大勢のファンが集中することにより、地域住民の生活に支障をきたすオーバーツーリズムが問題となる場合があります。『SLAM DUNK』の聖地として有名な鎌倉の江ノ電踏切では、写真撮影のために大勢のファンが集まり、交通渋滞や騒音などで地域住民の日常生活に影響を与える事態が発生しました。

このような問題を防ぐため、訪問者へのマナー啓発、分散化施策、地域ルールの明確化など、地元住民の生活にも配慮した環境整備が重要となります。

インバウンド対応力の強化

外国人観光客の増加に対応するため、多言語対応とマナー啓発の両面での環境整備が重要です。案内表示やパンフレット、公式サイトの多言語化に加え、文化の違いを考慮したコミュニケーション体制の構築が求められます。通訳アプリといったデジタルツールの活用により、言語の壁を越えたサービス提供も可能になります。


emoji_objects アニメツーリズムの可能性に注目しよう

アニメツーリズムは、適切な戦略により大きな経済効果を生み出す有効な地域振興策です。成功事例を参考に、版元・ファン・地域それぞれの立場に立って、慎重に進める必要があります。

地域経済への効果を高めるためには、効果的なグッズ展開も重要な要素となります。「その場でしか手に入らない」限定品は、ファンの購買意欲を高め、直接的な経済効果をもたらします。なかでも缶バッジは、手ごろな価格で旅行の思い出を形に残せるアイテムとして、多くの聖地で親しまれています。

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