
2024年の訪日外国人数は過去最多だった2019年を上回り過去最高を記録しました。政府が掲げる2025年の4,000万人目標も現実味を帯びるなか、インバウンドビジネスへの注目が高まっています。しかし、「具体的にどのような分野でどんなビジネスチャンスがあるのか知りたい」という声も少なくありません。
本記事では、インバウンドビジネスとは何か、最新の訪日外国人データや注目される理由、主要なビジネス形態、さらにビジネス展開で押さえるべき4つのポイントまで、幅広く解説します。
インバウンドビジネスとは
インバウンドビジネスとは、日本を訪れる外国人観光客をターゲットとした事業のことです。観光業だけでなく、小売業、飲食業、IT業界など幅広い分野で展開されています。
アウトバウンドビジネスとの違い
よく混同されがちですが、アウトバウンドビジネスとは日本人が海外に出かける際のサービスを指します。具体的には、海外旅行ツアーの企画・販売、海外ホテルの予約代行、海外留学サポートなどがアウトバウンドビジネスに該当します。
つまり、インバウンドは「外国人が日本に来る」、アウトバウンドは「日本人が海外に行く」という違いがあります。
なぜ今インバウンドビジネスが注目されるのか
インバウンド市場規模の拡大
インバウンドビジネスが注目される最大の理由は、訪日外国人による日本国内での商品購入やサービス利用、いわゆる「インバウンド需要」の急激な拡大にあります。
令和7年版観光白書(2025年5月発表)によると、コロナ禍で一時的に落ち込んでいた訪日外国人数は、2024年には3,600万人を突破し、過去最高を更新しました。
また、インバウンド消費動向調査(2024年年次報告書)によれば、同年のインバウンド消費額は8兆円規模となっています。
インバウンド需要については、「インバウンド需要とは? 注目される理由や取り込むポイントを解説」でくわしく解説しています。
参考:訪日外国人旅行者数・出国日本人数 | 観光統計・白書 | 観光庁
多様化する外国人観光客のニーズ
外国人観光客の消費行動も多様化しています。同調査からは、日本食を楽しむ、ショッピング、自然や景勝地の観光など、従来型の活動は根強い人気を誇る一方で、文化的・趣味的な体験への関心も高まりを見せていることがわかります。
例えば、「日本の歴史・伝統文化体験」や「日本の日常生活を体験する」、「ポップカルチャーを楽しむ」、「映画・アニメ縁(ゆかり)の地を訪問」などがその代表例です。
こうした多様なニーズの広がりは、従来の観光サービスにとどまらない新しい商品・サービスの可能性を示し、インバウンドビジネスの展開余地をさらに広げています。

出典:インバウンド消費動向調査(2024 年 年次報告書)|国土交通省観光庁 [PDF]
インバウンドビジネスの主なジャンル
インバウンドビジネスは、様々なジャンル・形態に広がっています。
直接的なサービス提供
外国人観光客にとって、「宿泊」「食事」「移動」「買い物」は旅の基本的なニーズであり、これらに応えるビジネスは、最も伝統的かつ代表的なインバウンドの形態といえます。こうした領域は安定した需要がある一方で、すでに多くの企業や店舗が参入しているため、サービス内容や体験の質で他と差別化を図ることが重要です。
- ホテルや民泊などの宿泊施設
- レストランや居酒屋での飲食サービス
- 観光ガイドや通訳サービス
- お土産や日用品の販売
外国人に人気の高い日本製品の傾向は、「外国人が好きな日本のものは? 日本製品の魅力やグッズ製作の注意点を解説」でくわしく解説しています。
日本文化の体験
外国人観光客の「日本でしかできない体験をしたい」という強いニーズに応えるサービスです。本格的でありながら、初心者でも安心して楽しめる工夫が求められます。また、外国人にも伝わるよう、構成や説明はできるだけシンプルにすることも大切です。
- 着物レンタルと撮影サービス
- 茶道や書道などの文化体験教室
- 寿司作りや和菓子作りなどの料理体験
- 温泉や銭湯の利用サービス
IT・デジタル
テクノロジーを活用して外国人観光客の利便性を向上させるサービスです。アプリやウェブサービスなどは、一度開発すれば多くのユーザーに提供でき、効率的な展開が可能です。
ただし、こうしたサービスは、有料課金・無料提供・広告収入・手数料収入など、収益の形が多様であるため、持続可能なビジネスモデルの設計が成功を左右します。
- 多言語対応の観光アプリ開発
- 翻訳サービスや通訳アプリ
- オンライン予約システムの提供
- SNSを活用した情報発信
ポップカルチャー・エンターテイメント
アニメやマンガ、ゲームなど、日本発のポップカルチャーに触れられるジャンルです。特に若い世代から高い関心を集めており、訪日目的のひとつにもなっています。
- アニメ・マンガの舞台を巡る「聖地巡礼」ツアー
- アニメ・マンガのキャラクターグッズ販売
- キャラクターの衣装を着て楽しむコスプレ体験サービス
- ゲームセンターやカラオケなど、日本ならではのエンタメ施設での体験
- ガチャガチャ(カプセルトイ)の販売
外国人に関心が高い日本カルチャーについては、下記の記事でくわしく解説しています。
聖地巡礼とは? ビジネスとして成功につなげるためのお役立ち情報を紹介
海外でも人気の日本のキャラクターは? グッズ製作ビジネスに役立つ情報を紹介
海外でも人気のガチャガチャ。その理由と参入するのにおすすめの商品を解説
インバウンドビジネス展開で押さえるべきポイント
インバウンドビジネスでは、次のポイントを押さえて展開するといいでしょう。
外国人観光客のニーズ把握
ターゲットとなる外国人観光客のニーズを正確に把握することが、第一歩です。まず、主要なターゲット国や地域を特定し、それぞれの文化的背景や消費傾向を調査しましょう。
観光庁の観光統計データでは、国別の訪日外国人数や消費動向、満足度調査などの詳細な情報が定期的に公開されており、これらを活用することで客観的な市場分析が可能になります。また、SNSやレビューサイトでの反応をチェックし、最新のトレンドや求められているサービスを継続的に把握することが有効です。
多言語に対応したコミュニケーション
少なくとも英語での基本的なコミュニケーションができる体制を整え、主要なターゲット国の言語にも対応できるよう準備しましょう。完璧な語学力がなくても、翻訳アプリを活用することで、基本的なやり取りは可能になります。また、ジェスチャーや表情、写真やイラストを使った非言語コミュニケーションも効果的です。
文化的な背景への理解
外国人観光客の多様な文化的背景を理解し、適切な配慮を行うことで、より満足度の高いサービスを提供できます。特に、イスラム教徒向けのハラール対応や、ベジタリアン・ヴィーガン向けの食事オプションなど、宗教や価値観に基づく食事制限への対応は慎重に行う必要があります。また、各国の習慣や礼儀作法の違いを理解し、日本ならではの「おもてなし」の心を、相手の文化に配慮した形で表現することが、印象的な体験につながります。
デジタル・IT環境の整備
無料Wi-Fiの提供、キャッシュレス決済、オンライン予約システムなどは、外国人観光客にとって利便性を高める基本的なインフラです。スマートフォンでの情報収集や決済がスムーズに行えることで、滞在中のストレスが軽減され、満足度向上にもつながります。
一方で、こうした環境を整えることは事業者側にとってもメリットがあります。現金管理や電話対応、語学対応の負担が減り、業務の効率化や人手不足の解消にもつながります。
emoji_objects インバウンドビジネスは顧客視点に立つことが重要
インバウンドビジネスには、直接的サービスから文化体験、ポップカルチャー、デジタル分野まで多様なビジネスチャンスが存在しています。成功の鍵は、外国人観光客の視点に立った丁寧なサービス設計にあります。
インバウンドビジネスのなかでも、グッズ販売は、観光地のお土産をはじめ、キャラクター商品やガチャガチャなど、幅広いニーズに応える分野です。特に缶バッジは、手ごろな価格で旅行の思い出を形に残せるアイテムとして、多くの場所で親しまれています。
バッジマンネットでは、缶バッジの制作に必要なマシンやパーツを幅広く取り揃えています。インバウンドビジネスでのグッズ展開をお考えの際は、ぜひお気軽にご相談ください。