
近年、オリジナルグッズの制作や販売を手軽に行えるサービスが増え、個人クリエイターや小規模ビジネスによるグッズ展開が活発になっています。その一方で、「大量に生産して在庫を抱えるリスクが怖い」「初期投資を抑えたい」といった悩みを持つ人も少なくありません。そうした課題を解消する手段として、いま注目されているのが「受注販売」という販売方法です。
本記事では、受注販売の基本から実践的なポイントまで徹底解説します。在庫リスクを減らしながら効率的にビジネスを展開したい方は、ぜひ参考にしてください。
受注販売とは
受注販売とは、あらかじめ商品を製造して在庫を持つのではなく、顧客から注文を受けてから製造・販売する方法です。これにより、余剰在庫や保管コストのリスクを大幅に減らすことができます。
通常の販売では、市場調査や過去の販売データをもとに需要を予測し、先に商品を生産します。この方法では、顧客がすぐに商品を受け取れるという利点がある反面、在庫を持つ必要があるため、売れ残りや保管にかかるコストが発生します。
一方、受注販売では、注文を受けてから商品を製造するため、初期投資や在庫リスクを抑えることができます。ただし、製造から発送までに時間がかかるため、顧客に届くまでのリードタイムが長くなるというデメリットもあります。
即納が求められる定番商品には通常販売が適していますが、需要予測が難しい限定品やオリジナル商品などには、受注販売が有効です。特に、個人クリエイターやイラストレーター、小規模事業者にとっては、無理なく始められる販売手法として注目されています。
イラストレーターのビジネスについては、「イラストを販売する方法とは?おすすめサイトや成功のコツ、注意点も解説」でくわしく解説しています。
受注販売と受注生産の違い
「受注販売」と「受注生産」はいずれも、注文を受けてから対応する形態ですが、使われる場面や意味合いが異なります。
受注販売は、小売業や卸売業など流通側の用語で、注文を受けてから商品を仕入れて販売する形態を指します。一方、受注生産では、製造業の用語で、注文を受けてから製品を製造します。
両者は明確に分けられるものではなく、業種やビジネスモデルによって重なることもあります。たとえば、ECを通じて製造から販売までを一貫して行うD2C(Direct to Consumer)では、受注販売と受注生産が一体となっているケースも珍しくありません。
受注生産やD2Cについて、以下の記事でくわしく解説しています。
>> 受注生産とは?メリット・デメリットや注意点、グッズ制作に役立つ情報も <<
>> D2Cとは?従来の販売方法との違いやメリット・デメリット、成功事例を解説 <<
受注販売に向いている商品
受注販売は全ての商品に適しているわけではなく、主に以下のような商品に向いています。
- 需要予測が難しい商品
新商品や市場の反応が読みにくい商品は、事前に在庫を持つことがリスクになります。注文を受けてから製造することで、売れ残りリスクを回避できます。
- 限定品やコレクターズアイテム
ファンやコレクターをターゲットにした限定商品は、過剰生産により価値が下がるおそれがあります。期間限定での受注により、希少性を高めながら効率よく提供できます。
- パーソナライズ商品
一つひとつ仕様が異なる商品は、在庫管理が難しくなりがちです。個別対応が可能な受注販売が適しています。
- 高額商品
単価が高い商品は在庫コストも大きくなります。確定注文に基づいた製造により、リスクを最小限に抑えられます。
- 季節性の強い商品
特定の季節やイベントに関連する商品は、シーズンを過ぎると売れ残りが課題になります。事前の注文受付によって、必要数だけを製造できます。
- ロングテール商品
多品種少量のニーズがある商品は、在庫を抱えると非効率になりがちですが、受注販売であれば幅広く展開できます。
パーソナライズ商品、多品種少量ニーズについては、以下の記事でくわしく解説しています。
>> パーソナライズ商品とは?基礎から成功例、缶バッジビジネスへの活用法も <<
>> 多品種少量生産とは?缶バッジ製作現場でも直面する課題や解決策を解説 <<
受注販売のメリット
受注販売には、次のようなメリットがあります。
在庫リスクが少ない
受注販売では、注文が確定した数量だけを製造します。そのため売れ残りリスクがほとんどなく、在庫管理コストや廃棄ロスを大幅に削減できます。需要予測が難しい新商品や季節商品、流行に左右されやすいデザイン商品では、過剰生産による損失を防ぐことにつながります。
初期コストが少ない
受注販売では、大量生産のための初期投資が不要なため、小資本でも商品展開が可能です。資金繰りの負担軽減と事業リスクの低減につながるでしょう。特に、スタートアップや個人クリエイターにとって、限られた資金で多品種の商品ラインナップを展開できる点は、大きなメリットとなります。
転売屋対策になる
人気商品の転売問題に悩む販売者にとって、受注販売は購入数制限と組み合わせることで効果的な対策となります。希少性による価格つり上げの余地をなくし、真のファンやユーザーに商品が届きやすくなります。ブランドイメージを保護しながら、公平な販売を実現できる販売方法といえます。
受注販売のデメリット
受注販売にはメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。
納期が長くなりやすい
注文後に製造を開始するため、商品が届くまでに「受注処理+製造+発送」の時間を要します。そのため、「すぐに欲しい」というニーズには応えにくく、待ち時間の長さによって顧客満足度の低下や注文キャンセルにつながる可能性があります。
製造面の制約を受けやすい
受注販売では、製造面で制約があります。例えば、常時受注型の場合は、小ロット生産のコスト高と頻繁な製造手配が課題となります。期間限定型では、再販判断の難しさが問題になります。どちらの場合も最小ロット数の制約を受けやすく、製造パートナーとの調整も複雑です。
小ロットのグッズ制作については、「小ロットでもできるグッズ制作!注文手順や費用、失敗を防ぐポイントも」でくわしく解説しています。
グッズの受注販売を成功させるポイント
ここまで受注販売の基本と一般的な特徴について解説してきましたが、最後に缶バッジをはじめとするグッズビジネス特有の受注販売のポイントについて解説します。
適切な受注期間の設定
受注期間は、商品特性や話題性に応じて慎重に設定する必要があります。期間が短すぎると十分な注文が集まらず、逆に長すぎると顧客の関心が薄れ、購入意欲の低下につながるおそれがあります。
人気の高いデザインやキャラクターグッズでは、短期集中型の受注で「期間限定」の特別感を演出することで、購買意欲を高める効果があります。常時受注を受け付ける場合でも、定期的に締切日を設け、一定の製造サイクルを設けることで業務効率を保ちやすくなります。
待ち時間を価値に変える顧客フォロー
受注販売では、納品までの時間が長くなりがちですが、その待ち時間を「体験価値」として提供する工夫が重要です。例えば、注文確定時のお礼メッセージや、製造スケジュールの共有、製造工程の進捗報告など、適切な情報提供を行うことで、顧客の安心感と期待感を高めることができます。さらに、丁寧な梱包や発送後のフォローアップも、満足度を高める大切なポイントです。
こうした対応は、「自分のために作られている」という特別感を演出し、ブランドへの信頼感やロイヤルティ向上にもつながります。
缶バッジの梱包方法については、「【缶バッジの梱包】必要な資材や手順、発送方法、ビジネスにおける注意点も」でくわしくは解説しています。
適切な生産体制の選択
受注販売を安定的に運用するには、自社の規模や商品ラインナップ、リソースに応じた生産体制の選択が欠かせません。
事業の立ち上げ初期には、専門業者への外注がリスクを抑えた現実的な手段となります。受注数が増えてきた段階で、内製化を検討すれば、追加注文や仕様変更への対応力が向上します。
また、基本工程は自社で担いつつ、特殊加工や繁忙期のみ外注を活用する「ハイブリッド体制」も効果的です。コスト・品質・柔軟性のバランスを見ながら、自社に最適な運用方法を模索することが、受注販売を成功に導く鍵となります。
内製化については、「内製化のメリット・デメリットとは?判断基準や効果的に進めるポイントも」でくわしく解説しています。
emoji_objects 受注販売の特徴を理解しビジネスに活用しよう
受注販売は、顧客からの注文を受けてから製造・販売を行う手法で、在庫リスクを避けたい個人クリエイターやイラストレーター、小規模事業者にとって、有効なビジネスモデルです。需要の変動が大きいグッズビジネスにおいても、柔軟に対応できる手法として活用されています。
成功の鍵は、商品特性に応じた受注期間の設定、丁寧な顧客フォロー、そして自社に合った生産体制の構築です。これらをバランスよく実践することで、顧客満足と効率的な運営を両立させながら、着実にビジネスを成長させていくことができるでしょう。
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