
製造現場での部品や資材の在庫切れは、多くの方が経験することでしょう。特に品質管理が厳しい製造業において、部品の欠品は生産遅延だけでなく、取引先の生産計画への影響、急な代替品調達による品質リスクなどさまざまな影響をもたらします。本記事では、欠品率の基礎知識から欠品率を改善する具体的な方法、缶バッジ製作特有の欠品率管理のポイントまでくわしく解説します。
欠品率とは
欠品率とは、商品やサービスの供給が需要に応えられない状態を数値化した指標です。一般的には「欠品している品目数 ÷ 全品目数 × 100」で算出します。例えば、100種類の商品のうち5種類が品切れの場合、欠品率は5%となります。
この指標は、小売業では販売機会の損失を、製造業では生産計画の遅延リスクを示す重要な管理基準として活用されています。
特に製造業では、原材料から完成品までの複数工程で在庫を保有するため、各段階での欠品率管理が必要不可欠です。工程別の管理目標は業界や製品特性によって異なります。
また、商品特性によって許容される欠品率も変動します。例えば、日用品と比較して、医療用品や産業機器などの重要部品では、より厳格な管理が求められます。
欠品率管理が重要な理由
欠品は売上機会の損失に直結し、顧客満足度の低下やブランド価値の低下につながります。特に競合商品が豊富な市場では、一度の欠品が顧客離れを引き起こす可能性があります。
製造業においては、部品の欠品が生産ライン全体に影響を及ぼします。例えば、一つの部品が在庫切れを起こすと、生産ラインの停止を招き、納期遅延によるペナルティや取引先の生産計画への影響まで、大きな問題に発展する可能性があります。また、急な代替品調達では、品質基準を満たせないこともあるでしょう。
しかし、単純に在庫を増やせばよいわけではありません。保管コストの増加だけでなく、在庫の品質劣化リスクも高まります。電子部品であれば静電気対策、金属部品であれば防錆対策など、保管環境の整備にも追加コストが必要となります。
このため欠品率の管理では、業界特性や商品特性を考慮した適正在庫水準の設定が重要です。適切な在庫水準を維持することで、機会損失と保管コストのバランスを最適化できます。
欠品率を下げるための具体的な方法
欠品率を下げることは、すなわち欠品の発生を防ぐことです。このためには、在庫の適正水準を見極め、それを維持する仕組みを構築することが基本です。製造現場では特に、原材料から完成品までの各工程で適切な管理が求められます。具体的には以下の対策をとるといいでしょう。
在庫の見える化
在庫管理の基本は「見える化」、つまり在庫状況の可視化です。原材料から仕掛品、完成品まで、全工程での在庫状況を正確に把握することが重要です。定位置管理を徹底し、各工程の部品・仕掛品の置き場を固定することで、必要な物の所在がすぐに分かる環境を整備できます。棚札やかんばんには、品番や発注点などの情報を明確に表示し、定期的な実地棚卸により、実在庫と記録の差異を早期に発見・是正する体制を構築します。
生産リードタイム短縮
製造工程の長さは、工程内の仕掛品量に直結します。各工程での停滞時間を分析し、生産リードタイムを短縮することで、在庫管理の複雑さを軽減できます。具体的には、段取り替え時間の短縮、工程間の同期化、一個流し生産の導入などの方法があります。
一個流し生産とは、製品を1個ずつ次工程に流していく生産方式のことです。消費者ニーズの多様化が進む昨今、この方式は多品種少量生産に適する方法として知られています。
多品種少量生産については、以下の記事でくわしく解説しています。
>> 多品種少量生産とは?缶バッジ製作現場でも直面する課題や解決策を解説 <<
需要予測の精度向上
生産計画と実需要の精度を高めることは、適正在庫の維持につながります。過去の使用実績データから、季節変動や生産計画の変更パターンを分析することで、より正確な予測が可能です。新製品の立ち上げ時や生産終了時期など、変動リスクの高い期間は特に注意が必要です。また、工程ごとの生産リードタイムを考慮した計画立案と、サプライヤーとの情報共有により、予測精度を向上させることができます。
デジタルツールの活用
バーコードやQRコードによる入出庫管理、在庫管理システムの導入は、在庫管理の正確性と効率性を高めます。これにより、リアルタイムでの在庫把握と適正在庫量の算出が可能になります。ただし、デジタル化の前に、基本的な在庫管理の仕組みを確立することが重要です。
これらの方法は、現場の状況や予算に応じて優先順位をつけて実施することをおすすめします。
在庫管理については、以下の記事でくわしく解説しています。
>> 正しい在庫管理方法でロスを撲滅!効率化と商品価値の維持について解説 <<
缶バッジ製作における欠品率管理のポイント
缶バッジ製作においても、欠品率を適正に管理することは重要です。ここでは、缶バッジという製品の特性を踏まえた、欠品率管理のポイントを解説します。
保管環境の適切な管理
缶バッジは薄い鉄板にブリキでメッキ加工を施した製品です。保管状態が不適切な場合、不良品となり、在庫があっても使用できない「実質的な欠品」が発生します。高温多湿環境ではサビが発生し、不適切な積み重ねは変形やへこみを引き起こすためです。品質維持のため、倉庫内の温度・湿度のモニタリング、サーキュレーターによる空気循環、防錆材の使用、そして適切な仕切り板や保護資材の活用など、総合的な品質管理体制が必要です。
缶バッジの不良品や防錆対策については、以下の記事でくわしく解説しています。
>> 缶バッジがサビてしまう原因とは? 対策や管理方法のポイントを解説 <<
トレンド性を考慮した在庫管理
キャラクターグッズやトレンド商品としての側面を持つ缶バッジは、市場ニーズの変化による陳腐化のリスクが高い製品です。過剰在庫は、保管コストの増加だけでなく、デザインの旬が過ぎることによる商品価値の低下も招きます。ブームの変動を見据えた生産計画の立案や小ロット生産の活用により、在庫の最適化を図ることが重要です。
缶バッジの小ロット生産については、以下の記事でくわしく解説しています。
>> 缶バッジビジネスにおける小ロット生産のメリット・デメリットを解説 <<
emoji_objects 欠品率管理には複数の視点からの取り組みが必要
製造業における欠品率管理は、在庫数の管理に加え、在庫の見える化や需要予測の精度向上といった基本的な対策を着実に行うことが不可欠です。そのうえで自社の製品特性に合わせた品質管理体制を構築することが大切です。とりわけ缶バッジ製作では、サビや変形による品質劣化と、トレンド変化による在庫リスクにも注意が必要です。
バッジマンネットでは、小ロット生産に適したマシンや劣化に強いパーツなど幅広く取り揃えており、ビジネスの規模や目的に合わせた選択が可能です。缶バッジビジネスや製造における悩みに対するお役立ちコラムも多数掲載しています。お困りの際はぜひ、ご覧になったうえでお気軽にご相談ください。