長期的な円安、物価高など企業を取り巻く環境は厳しさを増しており、原料の価格高騰や人件費の上昇に悩む企業も多いのではないでしょうか。恒常的に利益を上げていくためには固定費の見直しが有効です。

そこで本記事では、企業、特に製造業における固定費の削減が必要な理由や具体的な方法、注意点を解説します。

企業(製造業)における固定費と変動費

製造業では製品の種類や製造方法によって、固定費と変動費の比率が異なる場合があるのに注意が必要です。ここでは企業(製造業)の固定費と変動費について解説します。

固定費とは

固定費とは売上や生産量に関わらず一定額発生する費用を指します。製造業における代表的な固定費は以下のとおりです。

  • 人件費: 正社員や契約社員などの基本給、賞与、社会保険料
  • 減価償却費:設備や機械などの購入費用を一定期間にわたって配分した費用
  • 地代・家賃:工場やオフィスの賃借料
  • 通信費:電話代やインターネット接続料
  • 水道光熱費:電気代、水道代、ガス代
  • 保険料:火災保険、損害保険
  • 利息:借入金の利息

変動費とは

変動費とは売上や生産量に応じて増減する費用を指します。製造業における代表的な変動費は以下のとおりです。

  • 原材料費:製品を製造するために必要な材料費
  • 外注費:製造の一部を外部に委託した場合の費用
  • 燃料費:製造過程で使用される燃料の費用
  • 運送費:製品の出荷にかかる費用

変動費は商品の製造数が多くなると増加し、少ないと減少する傾向があります。

固定費削減が必要な理由

コスト削減は企業利益に大きく貢献します。売上を増加させることも重要ですが、コスト削減効果により利益を拡大できる可能性があります。コスト削減では、まず固定費から行うのが効果的で、理由としては以下があげられます。

影響範囲が大きい

固定費は生産量の変動に関わらず一定の金額が発生するため、削減は毎月の経費に直接影響を与えます。一方、変動費は生産量の変化に応じて変動するため、その削減は生産量や需要の変化によって影響が異なります。影響の範囲を考えると固定費削減はコストを抑える効率的な方法です。

持続的な影響

固定費の削減を一度すれば持続的にコスト削減効果が現れます。例えばオフィスの家賃や機械のリース料などの固定費を削減すれば、それ以降も毎月の支出が減少して長期的に効果が得られます。

生産性向上の余地

固定費の削減においては生産プロセスや設備の見直しを伴います。この過程で生産性を向上させるための改善策が見いだせる高い可能性があります。例えば生産ラインの再配置や効率的な機械の導入などがあげられます。

経営の安定化・リスク管理

固定費を削減することで、一時的に売上高が減少しても利益を確保しやすくなります。景気変動などの外部要因の影響を受けにくく、経営を安定させることにつながります。

固定費削減の方法

ここでは固定費削減の方法・アイデアを紹介します。

人件費の削減

業務効率化による人員削減が人件費抑制につながります。具体的な方法としては、作業手順の見直しと改善、自動化、IT化による作業の効率化、外部委託の活用などがあげられます。

人材育成によるスキルアップも、人件費をムダなく効果的に活用するのに役立ちます。多能工育成により人材を幅広く活用する、従業員のモチベーション向上による離職率の低減から雇用・教育費を削減するなどの策があります。

労働時間の短縮は単に残業代を節約できるだけでなく、ストレスや疲労の緩和から作業品質の向上につながります。フレックスタイム制やテレワークの導入、業務の集中化による残業時間の削減などにより、通勤時間や業務に従事する時間を短くできます。

人件費の削減では、余裕のなさから発生するヒューマンエラーについても考慮することが重要です。

製造業のヒューマンエラーに関しては、以下の記事でくわしく解説しています。

製造業におけるヒューマンエラーとは? 缶バッジ製作現場での事例や対策も解説

水道光熱費や通信費の見直し

水道光熱費、通信費など企業活動に欠かせない分野の見直しも大きな効果が期待できます。電力会社、ガス会社、通信会社各社の料金プランを比較検討し、複数社から見積もりを取るなどしながら最適なところを選択します。

また、節電や節水対策の徹底といった足元からのコスト削減策も重要です。エアコンの設定温度の調整やこまめな電源オフなどの意識向上にくわえ、節水型設備の導入も検討します。

「7つのムダ」の見直し

製造業における7つのムダとは、トヨタ生産方式で提唱された製品に付加価値を生み出さない行動を指します。

◾️加工のムダ

◾️在庫のムダ

  • 過剰な在庫
  • 不良在庫
  • 滞留在庫

◾️作りすぎのムダ

  • 顧客の需要を超えた生産
  • 先行生産
  • 計画と実際の生産量の不一致

◾️手待ちのムダ

  • 作業待ち
  • 材料待ち
  • 設備の故障による待ち

◾️動作のムダ

  • 不必要な移動
  • 不合理な作業姿勢
  • 手作業による作業

◾️運搬のムダ

  • 不要な搬送
  • 長距離の搬送
  • 不適切な搬送方法

◾️不良・手直しのムダ

老朽設備の更新

固定費削減においては、現在稼働している設備の見直しも必要です。具体的に以下のような見直しの方法があります。

省エネ設備への更新
エネルギー効率が良く生産性向上が見込まれる設備への移行が有効です。

設備の稼働率向上
設備のメンテナンスや修理で稼働率の向上を図ります。既存の設備を効果的に使用する手段がないかを検討します。

リースの活用
設備投資の抑制に向けて、新規購入ではなくリース利用を検討します。大きな資本を投入せずに済むため資金繰りの改善に役立ちます。

固定費削減における注意点

固定費削減の方法によっては、従業員のモチベーション低下や製品の品質劣化につながるリスクがあります。適切な固定費削減のために注意すべき点には以下が挙げられます。

必要な経費は削減しない
製品品質、生産プロセスに直接影響を与える分野については十分な検討し必要経費を確保します。

従業員のモチベーションや生産性低下に気をつける
例えば省エネのための温度管理などにより作業環境の低下につながると、従業員の働く意欲を損ねる可能性があります。労働環境に配慮しながら施策を実施することが大切です。

かかっているコストの分析をしっかり行う
コストの現状を把握し有効性の高い削減施策を採用します。原価計算など客観的な数値をもとに優先順位を決めます。

コスト意識を現場従業員にも持たせる
コスト削減には現場の協力が不可欠です。従業員の理解を求めながら、統一性のあるコスト意識を浸透させる必要があります。

缶バッジ製作における固定費削減

缶バッジ製作現場においても原料高騰などによるコスト増に悩み、経費削減に悩む経営者は少なくありません。缶バッジ製作における固定費削減の具体的な対応方法を解説します。

缶バッジマシンの見直し

手動から自動マシンへの移行、あるいはメーカーの切り替えで効率性を上げられないかを検討します。商品の生産速度の向上により利益拡大が見込めるだけでなく、故障率の少ないマシンにより時間的ロスによる利益低下を回避できます。

不良率の見直し

作業工程で不良を多く出していないかを確認します。不良率の高い場合には、作業フローを見直し不良の発生箇所を特定して改善します。

高性能マシンの導入により品質の一貫性を高め、不良率を低下することも可能です。自動化できる部分が増えることで作業者を選ばず、品質の良い缶バッジ製作が実現します。

不良対策については以下の記事でくわしく解説しています。

製造業の不良対策は重要な経営課題! 原因の把握と改善に向けた取り組みとは

在庫管理および保管体制の見直し

保管状態が悪くサビつきなどでロスを出していないか確認します。使えないパーツがあると在庫不足により、生産のチャンスを逃しかねません。

サプライヤーの見直し

サプライヤーを見直して、適切な価格交渉と供給チェーンの最適化を実現します。仕入れ先にはタイムリーな供給、高品質な素材の提供が可能な事業者を選定します。

缶バッジ製作における効率化や生産性向上については以下のページでお役立ち資料の無料ダウンロードが可能です。ぜひご利用ください。

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固定費削減についてもう一度考えてみよう

コストのなかでも固定費は常にかかるものとして捉えられているため、不合理な点があっても見逃されがちです。しかし固定費を見直すことで、長期的な利益につながるケースも少なくありません。わずかな違いでも、毎月分が積み重なると大きな差です。

また一時的な設備導入コストがあっても、長い目で見た場合には大きな削減効果になる場合もあります。固定費を見直す際には、俯瞰的な視点を持つことが大切です。

バッジマンネットでは製造業、なかでも缶バッジ製造現場における課題や悩みに対するお役立ちコラムを多数掲載しています。固定費削減効果を高め生産効率向上を実現するためにも、高品質な缶バッジマシンやパーツを提供しているバッジマンネットをぜひご活用ください。