動物園は、教育的な使命や種の保護活動の継続など、多面的な価値を持つ施設です。また、家族連れやカップルなど幅広い層に愛される魅力もあります。しかし、少子化やレジャーの多様化、他施設との競争が進む中、来園者数の確保に課題を感じている運営担当者の方も多いのではないでしょうか。

本記事では、動物園が直面する集客の課題を整理し、具体的な集客アイデアや成功事例をご紹介します。


動物園の集客を難しくしている理由

来園者数の増加は単に賑わいを生むだけでなく、入園料やグッズ販売、飲食などを通じて収益に直結する重要な要素です。そのため、集客は動物園の安定運営や動物の飼育環境を守るためにも欠かせません。しかし、動物園の集客が難しいのには様々な理由が存在します。

情報発信が不足している

多くの動物園では、SNSやWebサイトでの情報発信に改善の余地があります。動物の個性や飼育員の専門知識、季節ごとの見どころといった魅力的なコンテンツを持ちながら、それを効果的に発信するノウハウが不足している動物園も少なくありません。結果として、潜在的な来園者に動物園の魅力が十分に伝わらず、集客の機会を逃しているおそれがあります。

他施設との差別化が難しい

テーマパークや他のエンターテインメント施設との競争が激化する中、独自の体験価値を打ち出すことが重要な課題となっています。従来の展示方法だけでは、訪問者の心に残る特別な体験を提供するのが困難です。そのため、「ここでしか味わえない体験がある」と感じてもらえない場合には、リピート率の向上や口コミによる集客効果を期待するのは難しいでしょう。

来園の利便性が不十分

来園時にいかに快適に過ごせるかという点は、特に家族連れにとって重要な要素となります。例えば、事前予約ができない、混雑状況がわからない、といった状況は、不安要素となり、来園のハードルが高くします。来園時の「行ったけど混雑で入れなかった」「長時間並んで疲れてしまった」といった不満も満足度を下げる要因です。

また、インバウンド需要が拡大するなか、多言語対応や案内表示の整備が不十分な動物園では、外国人観光客にとっては不便な環境となります。結果として来園をためらう要因となるでしょう。

インバウンド需要については、「インバウンド需要とは? 注目される理由や取り込むポイントを解説」で詳しく解説しています。

同様の課題は、水族館でもあります。

詳しくは、「水族館の集客に効果的なイベント・施策とは?成功させるポイントや事例も で解説しています。


動物園の集客アイデア

動物園の集客における課題を克服するためのアイデアを紹介します。

顧客体験の充実

季節イベントや体験型プログラムの導入

四季に合わせたイベントや特別プログラムは、リピート来園の大きな動機となります。

夏の夜間開園「サマーナイトツアー」、秋の動物たちの冬支度見学会、春の赤ちゃん動物お披露目イベントなど、季節限定の特別感を演出することで来園者の期待感を高められます。また、飼育員による餌やり体験や動物のお世話体験など、普段見ることのできない動物園の裏側を体験できるプログラムは、特に家族連れに人気です。

ここでしか買えないオリジナルグッズの販売

動物園でしか買えないオリジナルグッズは、来園の記念品として重要な役割を果たします。最近では特定の動物を「推し」として応援する「推し活」の文化が広がりつつあり、推しの動物グッズを集める楽しみも集客の動機になります。その動物園にしかいない動物をモチーフにしたぬいぐるみや、飼育員が手作りする動物の写真集、来園日限定の缶バッジなど、特別感のある商品開発が効果的です。SNS映えするデザインにすることで、来園者による口コミ効果を生み出すことも期待できます。

オリジナルグッズや推し活については、「オリジナルグッズで売れるものを製作するには? 売れない理由と対策を解説」「推し活の市場規模は?最新動向から基礎知識、グッズビジネスに役立つ情報も」で詳しく解説しています。

会員制・リピーター優遇プランの導入

年間パスポートに加えて、来園回数に応じた特典制度や会員限定イベントの開催により、リピーターの満足度を向上させることができます。誕生月の入園料無料、会員限定の早朝開園、飼育員との座談会への参加権など、会員だけの特別な体験を提供することで、継続的な来園を促進できます。

利便性の向上

事前予約システムの導入

事前予約システムの導入により、来園者の不安を解消し、計画的な来園を促進できます。入園券の事前購入やイベントへの参加予約により、待ち時間を削減できます。特に混雑が予想される土日祝日や連休時には大きなメリットとなるでしょう。駐車場の事前予約システムも、特に家族連れにとって大きな安心材料となります。

混雑状況やイベントスケジュールのリアルタイム発信

来園者が快適に過ごせるよう、リアルタイムでの情報提供が重要です。園内の混雑状況、動物の展示状況、イベントの開始時間変更などを、Webサイトやアプリで随時更新することで、来園者の満足度向上につながります。

多言語対応の整備

訪日外国人の増加に対応するため、案内表示の多言語化や音声ガイドの導入を検討しましょう。英語や中国語、韓国語などの主要言語に対応した園内マップや動物説明板を用意することで、外国人観光客にとってもわかりやすい環境を整備できます。

キャッシュレス決済の整備

キャッシュレス決済は、若い世代や訪日外国人のニーズに対応できる方法です。QRコード決済や電子マネー、クレジットカードなど、多様な決済手段を用意することで、現金を持参していない来園者も安心して入園できます。

認知拡大・情報発信の強化

公式サイト・SNSを活用した情報発信

定期的なコンテンツの発信は、潜在的な来園者の関心を引く有効な手段です。動物の成長記録や季節ごとの見どころなど、動物園ならではの魅力ある情報を届けることで、動物園のファンを増やすことにつながります。また、飼育員や園長の個性を生かした情報発信も効果的です。担当動物への愛情や専門知識を自身の言葉で語ることで、来園者との距離を縮めることができます。リソースやノウハウが不足している場合には、スマートフォンで撮影した動物の日常的な様子から始めるなど、身近なツールを活用した小さな取り組みから始めることをおすすめします。

SNSや口コミを生かした話題づくり

来園者による自発的な投稿を促進する仕組みづくりが重要です。インスタ映えするフォトスポットの設置、ハッシュタグキャンペーンの実施、口コミ投稿者への特典提供などにより、来園者自身が動物園の魅力を拡散してくれる環境を整えることができます。口コミは公式発信よりも信頼性が高く、新規来園者の来園決定において大きな影響力を持つため、積極的に活用したい情報発信手段です。良質な口コミを増やすことで、効果的な集客につなげることができます。

これらのアイデアは、各動物園の規模や予算、特色に応じて組み合わせて検討することが重要です。小規模な取り組みから始めて、効果を見極めながら、取り組みを広げていくのが現実的です。


成功事例に学ぶ集客のヒント

ここでは、日本国内で特に注目される成功事例を紹介します。

旭山動物園:行動展示による圧倒的な体験価値

北海道の旭山動物園は、「行動展示」というコンセプトで動物園業界に革命を起こした代表的な成功事例です。従来の「形態展示」から脱却し、動物本来の行動や能力を引き出すこの展示方法を導入することで、来園者に特別な体験を提供し、強烈な印象を与えました。ペンギンの水中遊泳を間近で観察できる水中トンネルや、ホッキョクグマのダイナミックな泳ぎを見せる巨大なプールなど、動物の生態を生かした展示は、全国から多くの来園者を集めています。

参考:旭川市 旭山動物園

長崎バイオパーク:ふれあい重視の運営とSNS戦略

長崎バイオパークは、動物との距離の近さを魅力とした「ふれあい重視の運営」で成功を収めています。カピバラとの入浴体験や、園内を自由に歩き回る動物たちとの自然な触れ合いが、他の動物園では味わえない特別な体験として人気を博しました。また、SNSを活用した情報発信にも力を入れており、動物たちの日常的な様子や愛らしい瞬間を継続的に発信することで、オンライン上でのファン層を獲得し、国内外にファンから来園者を増やしています。

こうした取り組みはファンマーケティングの一環といえます。詳しくは、「ファンマーケティングとは?基礎知識や実践のポイント、成功事例を解説」で解説しています。

参考 : 長崎バイオパーク – ZOOっと近くにふれあえる九州の動物園&植物園


emoji_objects 動物園の集客にはさまざまな角度からの取り組みが必要

動物園の集客は、単一の施策に頼るのではなく、さまざまな方法を組み合わせて取り組むことが大切です。園の魅力や運営体制に合わせて実践できる取り組みからまずは着手し、効果を見ながら改善や調整を続けることをおすすめします。

今回紹介した集客アイデアは、来園者の満足度を高めると同時に、収益の安定化にもつながる取り組みです。オリジナルグッズの販売はその一例で、動物園ならではの魅力を表現できる有効な手段といえます。特に缶バッジは、マシンやパーツを揃えることで園内でも手軽に製造でき、来園者にとって思い出をその場で形に残せるアイテムとして高い人気があります。

バッジマンネットでは、目的や用途に応じてさまざまなマシンやパーツを取り揃えています。バッジマンネットにてくわしくご紹介していますので、ご覧になったうえで、お気軽にお問い合わせください。