SNSや同人誌、ファンアートなどで日常的に見かける二次創作。多くの人に親しまれている一方で、著作権との関係が分かりにくく、「どこまで大丈夫?」「どうするとNG?」と不安を感じるケースも少なくありません。二次創作は法律的にグレーゾーンと言われることもあり、知らずに活動していると思わぬトラブルに発展することも考えられます。

本記事では、二次創作の基本的な考え方から著作権との関係、企業が公開するガイドライン、注意すべきポイントまでをわかりやすく解説します。


二次創作とは

二次創作はファン活動の中でも特に広く親しまれている表現手法です。ここでは、その意味や一次創作との違いについて整理します。

二次創作の定義

二次創作とは、既存の作品(漫画・アニメ・ゲーム・小説など)のキャラクターや世界観、ストーリーをもとに制作された創作物を指します。英語では「derivative work(派生作品)」と呼ばれ、ファンアート、同人誌、コスプレ、MAD動画、二次創作小説など、多様な形態があります。

ファン活動の一環として楽しまれており、同人誌イベントやSNSを通じて作品を発表するクリエイターが多く存在します。

これらは原作への愛情やリスペクトを前提に制作されることが多く、SNSや同人誌イベントを中心に多くのクリエイターが活動しています。原作の魅力を広め、ファンコミュニティを活性化させる役割を果たしているため、著作権者が一定の範囲で黙認しているケースも少なくありません。

二次創作は、同人グッズや推し活文化などとも密接に結びついています。

詳しくは、「同人グッズの種類とは?オタク需要をビジネスにするためのポイントを解説」「推し活の市場規模は?最新動向から基礎知識、グッズビジネスに役立つ情報も」で解説しています。

同人誌イベントについては、「即売会とは?同人誌イベントの基礎知識から参加方法までわかりやすく解説」で解説しています。

一次創作との線引き

一次創作とは、キャラクター・世界観・ストーリーなど、すべてが創作者自身の発想に基づいたオリジナル作品を指します。これに対し、二次創作は既存作品の要素を利用するため、原作の著作権の影響を強く受けます。

キャラクター名、固有の設定、独自デザインなど、原作特有の要素を使用していれば、その作品は二次創作とみなされます。


二次創作と著作権の関係

二次創作は広く親しまれている文化ですが、著作権法の上では明確なルールが存在します。ここでは、二次創作が法律上どのように扱われているのか、また許可なく行うとどのようなリスクがあるのかを解説します。

二次創作の著作権法における位置づけ

二次創作は、著作権法上「二次的著作物」に該当します。著作権法第2条第1項第11号では、原作を翻訳・編曲・変形・脚色・映画化するなど、元の著作物をもとに新しく創作された作品と定義されています。

ここで重要なのは、原作を翻案する権利(翻案権)は原作者が専有する権利であるという点です(著作権法第27条)。そのため、ファンが善意で制作したとしても、原作者の許可なく二次創作物を制作・公開・販売する行為は、著作権侵害となる可能性があります。

特に販売を伴う場合や、原作の設定・キャラクターをそのまま利用する場合はリスクが高まるため、許諾の有無を確認することが重要です。

参考:著作権法 | e-Gov 法令検索

著作権侵害に該当した場合の主なリスク

著作権侵害が認められた場合、民事・刑事の両面から責任を問われる可能性があります。

[民事上のリスク]

著作権を侵害した場合、民事上は次のような請求を受ける可能性があります。

  • 損害賠償請求:
    権利者が被った損害や、侵害者が得た利益を基に金額が算定されます。
  • 差止請求:
    問題となっている作品の販売・公開・配布の停止を求められます。
  • 販売で得た利益(売上)の返還請求:
    販売で得た収益の返還を求められるケースもあります。

とくに同人誌やグッズ販売のように、収益が明確に算出できる場合は、売上がそのまま請求の対象 になることもあります。商業規模でなくても、金銭を得ている形であれば請求範囲に含まれる可能性がある点に注意が必要です。

[刑事上のリスク]

著作権を侵害した場合、状況によっては刑事責任を問われることがあります。著作権法第119条では、次のような罰則が規定されています。

  • 10年以下の懲役
  • 1000万円以下の罰金
  • 懲役と罰金の併科

※法人の場合は 3億円以下の罰金 が科される可能性もあります。

実際に刑事事件へ発展するケースは多くありませんが、悪質な海賊版販売・大量複製・継続的な無断販売 などは厳しく取り締まられています。非営利の同人活動であっても、規模や影響によっては刑事告訴されることもあるため、「営利かどうか」ではなく、権利者の意向やガイドラインに従うことが重要 です。

[SNS・同人活動における実務上のリスク]

二次創作はSNSや同人イベントで広く楽しまれていますが、著作権者のガイドラインを守らなかった場合、以下のような実務的な措置を受ける可能性があります。

  • 投稿削除・アカウント凍結(SNSの運営による対応)
  • 著作権者からの削除申請
  • 作品公開の停止要請
  • イベントでの頒布中止・出展禁止措置

SNSの場合、権利者からの申し立てだけでなく、プラットフォーム側が独自の規約に基づいて対応することもあります。また、非営利であっても、原作の設定をそのまま利用する・権利者が禁止する用途で配布するなど、ガイドラインに反した活動はリスクを伴います。

近年ではファンとの共存を図るため、企業が 公式の二次創作ガイドライン を公開する例が増えています。

創作や発信を行う際には、必ずガイドラインを確認することで、安心して活動できる環境が整います。


二次創作ガイドラインとは

近年、二次創作に対して明確な方針を示す企業が増えています。これは、ファン活動を尊重しつつ、著作権を適切に保護するための仕組みとして整備されているものです。ガイドラインを確認することで、安心して創作や公開ができる環境が整います。

ガイドラインを公開している主な企業

現在、多くの企業が自社作品の二次創作に関するガイドラインを公開し、「どこまで許されるのか」「何が禁止されるのか」を明示しています。以下はその代表例です。

これらのガイドラインでは、二次創作の可否や条件、禁止事項が明確に示されており、作品ごとの方針も大きく異なるため、創作前の確認が不可欠です。

ガイドラインで定められる条件・禁止事項

ガイドラインには、二次創作を行う際に守るべきルールや、活動が許容される範囲が細かく定められています。ここでは、特に多くの企業が共通して設定している条件や禁止事項の例を紹介します。

[一般的に二次創作が許可されやすい条件]

  • 個人による非営利目的の創作
  • ファンアート・同人誌としての制作・頒布
  • 公式と誤認されないデザインや表記に配慮した創作

[よくある禁止事項]

  • 営利目的での大規模販売(常時通販・委託販売など)
  • 公式グッズと誤解される可能性のあるデザイン・表現
  • 過度な性的・暴力的表現、誹謗中傷を含む内容
  • 商標登録された名称・ロゴの無断使用

著作権や商標の扱いを正しく理解することで、ガイドラインの意図をより深く理解できます。

詳しくは、「版権キャラクターとは?著作権侵害せず安全に利用する方法・活用例を解説」「グッズ 製作で知っておくべき著作権の基本知識と対応策について」で解説しています。


二次創作でトラブルになりやすい具体的なケース

二次創作は身近で楽しまれている文化ですが、誤った判断をすると著作権侵害につながる場合があります。ここでは、実際にトラブルになりやすい代表的なケースを取り上げ、注意点を解説します。

ケース1:営利目的と判断される活動を伴う場合

通販サイトで常時販売を行う、SNSで積極的に告知を行うなど、継続的な販売活動は、たとえ少部数でも営利目的と見なされる可能性があります。とくに、次のような点がある場合は「営利性が高い」と判断されやすく注意が必要です。

  • 活動の規模が大きい、または継続的である
  • SNSや広告を使って露出を増やしている
  • 通販・委託など商業的な販売方法を採用している

これらの要素が重なるほど、非営利のファン活動ではなく「商売として行っている」と見なされやすくなります。誤解を招かないよう、運用方法や見せ方には慎重な配慮が求められます。

ケース2:ガイドラインの解釈が難しい場合

ガイドラインが公開されていても、内容が抽象的で判断に迷うケースがあります。とくに次のような点は、解釈が分かれやすいため注意が必要です。

  • 「少部数なら可」と書かれているが、具体的な上限数が明記されていない
  • 「非営利」とあるが、材料費や手数料の上乗せがどこまで許されるか曖昧
  • 頒布場所・頒布方法について細かい規定がない
  • 作品ジャンルごとにガイドラインの解釈が異なる場合がある

こうした不明確な点がある場合は、権利者に問い合わせるか、もっとも保守的な(安全側の)判断を採用するのが確実です。「他の人がやっているから大丈夫」という考え方は、誤解やトラブルの原因になりやすいため避けましょう。


二次創作におけるグッズ制作の注意点

二次創作活動の中でも、缶バッジやアクリルスタンドなどのグッズ制作は、活動が営利目的と判断されやすく、特に慎重な対応が求められます。作品によっては、イラストや漫画といった「表現物」は許可されていても、立体物やグッズの制作・販売を禁じているケースもあります。

そのため、制作前には必ず公式ガイドラインを確認し、内容に沿った形で進めることが重要です。また、公式商品と誤認されないよう、デザインや販売方法の見せ方にも注意が必要です。

グッズは商品性が強いため、表現物よりも権利者からの管理が厳しくなる傾向があります。制作から販売まで一連の流れに配慮し、トラブルが起きないよう慎重に進めましょう。


二次創作のトラブルを避けるための3つポイント

二次創作を安心して続けるためには、著作権やガイドラインを正しく理解し、適切に対応することが欠かせません。特に以下のポイントを押さえておくことで、不要な誤解やトラブルを避けやすくなります。

1. 公式ガイドラインを必ず確認し、遵守する

作品ごとにガイドラインの内容は異なり、許可される範囲や禁止事項が細かく定められています。創作を始める前に、公式サイトで最新のガイドラインを確認することが重要です。ガイドラインがない場合は、より慎重な判断が求められます。

また、著作権に関する企業の方針は変更されることがあるため、定期的に情報をチェックし、更新に気付けるようにしておきましょう。ガイドラインが改定された場合は、新しいルールに合わせて活動内容を見直す必要があります。

万が一、権利者や代理人から指摘があった場合には、誠実に対応し、販売停止や在庫処分など求められた措置を速やかに行うことが重要です。

2.海外作品の二次創作には注意する

海外作品は、日本とは著作権法の考え方や文化的背景が異なる場合があります。特に海外企業は著作物の管理が厳しいことも多く、国内作品以上に注意が必要です。

二次創作を行う際は、現地のガイドラインや企業の方針を必ず確認し、不明な点があれば問い合わせる、あるいは活動を控えるなど、慎重な姿勢で臨みましょう。

3. 他のクリエイターの権利も尊重する

二次創作であっても、制作したクリエイターには著作権があります。他人のイラストや文章を無断転載したり、AI学習用に勝手に利用したりする行為は、著作権侵害に当たります。

「自分も二次創作をしているから大丈夫」という考えは誤りで、クリエイター個人の権利も同様に尊重する必要があります。二次創作の範囲でも互いの権利を守る意識を持つことが、健全な創作環境を保つうえで重要です。


emoji_objects 二次創作を続けるためにはルール理解が不可欠

二次創作を安全に楽しむためには、著作権法や公式ガイドラインを正しく理解し、その範囲内で活動することが大切です。基本的なルールを押さえておくことで、思わぬトラブルを未然に防げます。

特に、「他の人もやっているから大丈夫」という考え方は危険です。突然の指摘によって創作活動を続けられなくなることもあるため、自分で判断できるだけの知識を身につけておきましょう。

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