企業の販促活動において「人気キャラクターを使ったグッズを作りたい」「SNSキャンペーンでアニメキャラとコラボしたい」と考えた際、気になるのが著作権や権利処理の問題ではないでしょうか。勝手に使用してしまうと、トラブルや法的リスクにつながる可能性があります。版権キャラクター(版権キャラ)を安全に活用するには、正しい知識と適切な手続きが欠かせません。

本記事では、版権キャラクターの基本知識から、企業が活用する際のメリット、契約の進め方まで、グッズ企画担当者やマーケティング担当者が知っておくべき情報を幅広く解説します。


版権キャラクター(版権キャラ)とは

版権キャラクターとは、著作権や商標権などの知的財産権が特定の権利者に帰属しているキャラクターの総称です。略して「版権キャラ」と呼ばれることもあります。

「版権」という言葉自体は法律用語ではなく、ビジネスの現場で慣習的に使われる表現です。英語では「Copyright」や「Licensed Character」などと訳され、他者が使用するには権利者の許諾が必要なキャラクターを指しています。

アニメやマンガの登場人物、企業マスコット、ゲームキャラクターなどが代表的な例で、商品化や広告利用の際には必ず権利者の許可が必要になります。

版権キャラクターのライセンス契約

企業が版権キャラクターを利用する場合は、「ライセンス契約(使用許諾契約)」を結ぶ必要があります。これは、著作権や商標権を持つライセンサー(権利者)が企業(ライセンシー)に対し、一定の条件で使用を認める正式な許可のことです。

「著作権」「商標権」との違い

「版権」という言葉はキャラクターに関わる複数の権利(主に著作権・商標権)をまとめて指すビジネス上の表現です。一方で、著作権と商標権は法律で定められた個別の権利であり、それぞれ保護対象や発生条件が異なります。

  • 著作権
    商品やサービスの出所を示すマークを保護する権利です。キャラクター名・ロゴ・特徴的なデザインなどが該当します。有名キャラの名前を許諾なく商品名に使用すると、商標権侵害となる可能性があります。
  • 商標権
    商品やサービスの出所を示すマークを保護する権利で、キャラクター名・ロゴ・特徴的なアイコンなどが該当します。有名キャラの名前を許諾なく商品名に利用すると商標権侵害となる可能性があります。

    実務では、版権キャラクターの利用には著作権と商標権の両方が関わるケースが多く、画像の使用(著作権)だけでなく、名前・ロゴの使用(商標権)についても包括的な権利処理が求められます。

版権キャラクターの種類

キャラクターと一口に言っても、その権利の所在や活用目的により、いくつかのカテゴリーに分けられます。

アニメ・ゲームなどコンテンツ内のキャラクター

アニメ・漫画・ゲームに登場するキャラクターは最も代表的な版権キャラクターです。「ピカチュウ」「アンパンマン」「ドラえもん」などが該当し、高い人気と集客力を持ちます。一方で、出版社・制作会社・原作者など複数の権利者が関与している場合もあり、権利処理が複雑になりやすい特徴があります。

キャラクタービジネス企業のキャラクター

キャラクター商品の企画・ライセンス展開を主力事業とする企業が保有するキャラクターもあります。例えば、株式会社サンリオの「ハローキティ」「シナモロール」、サンエックス株式会社の「リラックマ」「すみっコぐらし」などが代表的です。

ライセンスビジネスについては以下の記事で詳しく解説しています。

企業のオリジナルキャラクター

企業の商品やブランドのイメージ向上のために作られたキャラクターです。「Suicaのペンギン」や「ポインコ兄弟」のように、広告にとどまらずグッズ展開やイベント出演など、幅広く活躍するケースも増えています。

イベント・大会の公式キャラクター

オリンピックや万博などの大型イベントでは、公式キャラクターが設定されることがあります。近年では、2025年大阪・関西万博の公式キャラクター「ミャクミャク」が話題となりました。

公的機関・ご当地キャラクター

官公庁や公的機関がPRや啓発のためにキャラクターを活用するケースも見られます。警視庁の「ピーポくん」やデジタル庁の「マイナちゃん」などが代表例です。

また、県や市などの自治体が展開するご当地キャラクターは“ゆるキャラ”として一大ジャンルを形成し、地域ブランディングや観光促進に貢献しています。熊本県の「くまモン」や千葉県の「チーバくん」がその代表です。

地域振興については、「地域PRの目的と具体的な方法や成功させるためのポイントを事例で解説」で詳しく解説しています。


企業が版権キャラを活用するメリット

版権キャラクターの活用は、企業のマーケティング活動において非常に有効な手段です。その理由として、次のようなメリットが挙げられます。

メリット1 :認知度アップ

版権キャラクターが持つ強い認知度・好感度を、自社商品やサービスの訴求に活かすことができます。例えば、新商品のパッケージに人気アニメキャラクターを起用すれば、キャラクターのファン層に直接リーチでき、通常の広告では届きにくい層にも効率的にアプローチできます。

特に、新規市場への参入時や、認知度の低い商品・サービスの場合は、キャラクターの力を借りることで初期のマーケティングコストを大きく削減できるというメリットがあります。

メリット2 :ブランドイメージの強化

キャラクターの世界観やイメージを自社ブランドに重ねることで、消費者の感情に訴求しやすくなります。例えば、環境配慮型商品に自然や動物をモチーフにしたキャラクターを採用することで、商品のコンセプトが視覚的に伝わりやすくなり、ブランドメッセージもより明確になります。

マーケティングへのキャラクター活用については、「キャラクターマーケティングの成功例と実施のポイントを紹介」でも詳しく解説しています。


版権キャラ利用が著作権侵害とみなされるケース

版権キャラクターにはさまざまな活用方法がありますが、適切な手続きを行わない場合、著作権侵害に該当することがあります。ここでは、企業が特に注意すべきケースを紹介します。

グッズ・ノベルティの無断制作・配布

許諾を得ずにキャラクターを使用したグッズを制作・配布する行為は、著作権侵害にあたります。例えば、人気アニメキャラクターをプリントした缶バッジやTシャツ、ステッカーなどを無断で作り、イベントで配布・販売する行為は明確に違法です。

販売・配布の有無に関わらず、権利者の許諾なく複製・使用すること自体が著作権法に抵触します。

SNS・広告でのキャラクター画像の無断使用

企業の公式SNS投稿や広告に、許諾なしでキャラクター画像を使用する行為も著作権侵害となります。例えば、キャンペーンを盛り上げる目的でアニメキャラの画像を投稿したり、店頭POPに無断で使用したりするケースが該当します。

社内イベント・内部資料でのキャラクターの無断利用

「社内利用だから大丈夫」と誤解されがちですが、社内イベントや内部資料への無断使用も問題となる可能性があります。社内運動会のチームTシャツ、社内プレゼン資料、研修資料への利用なども、権利者の許諾がなければ著作権侵害となる場合があります。

社内向けであっても「複製」「頒布」「上映」などの行為が発生すれば著作権法の対象になるためです。

無断使用が発覚した場合、損害賠償請求や差し止め請求、悪質な場合は刑事責任に発展する可能性があります。また、企業の信用失墜や炎上リスクにもつながり、取引先や顧客との信頼関係にも大きな影響を及ぼすことがあります。


版権キャラクターを安全に利用するための方法

版権キャラクターを安心して活用するためには、権利者との適切なライセンス契約が欠かせません。ここでは、企業がキャラクターを利用する際の一般的な手続きの流れを紹介します。

1. 権利者の確認

まず、利用したいキャラクターの権利者が誰なのかを正確に把握します。アニメや漫画のキャラクターの場合、出版社・制作会社・原作者など複数の権利者が関与しているケースも珍しくありません。誤った相手と契約してしまうと、後から真の権利者から権利侵害を指摘され、商品回収や販売停止に発展する可能性があります。公式サイトや権利表記の確認、不明点の問い合わせは必ず行いましょう。

あわせて、下記のような自社側の利用条件を明確にしておくことで、後の交渉がスムーズになります

  • 使用目的
  • 商品カテゴリー
  • 販売数量
  • 販売地域(国内/海外)
  • 使用期間

2. ライセンス申請

権利者(またはライセンスエージェント)へ利用申請を提出します。申請にあたっては、使用目的・媒体・期間・数量・配布 / 販売方法・販売地域など、利用の具体的な条件を明確に伝えることが重要です。

その後、権利者から提示される契約条件を確認し、必要に応じて内容の調整や交渉を進めていきます。

3. 契約締結・使用料の支払い

条件に合意したら、正式にライセンス契約を締結し、使用料(ロイヤリティ)を支払います。契約内容に不備があると後のトラブルにつながるため、契約書の記載事項は事前にしっかり確認しておく必要があります。

4. 制作物の事前承認

各種グッズや広告物のデザインについて、権利者の事前承認を受けます。多くのキャラクタービジネスでは、この承認プロセスが必須で、承認前に製造を進めることは認められていません。

5. 使用開始

制作・販売・配布は、承認内容に沿って進めていきます。 使用実績や販売状況の報告を求められることもあり、その点もあらかじめ把握しておくと安心です。契約期間や利用範囲を遵守し、契約条件に沿って運用を継続していく姿勢が求められます。


版権キャラクターの利用時に注意すべきこと

版権キャラクターを活用する際には、特に次の2点に注意が必要です。

契約内容を十分に確認する

ライセンス契約では、使用できるキャラクターの図柄やポーズ、製造数量、配布方法、使用期間などを具体的に明記することが重要です。例えば「缶バッジ〇個」で契約したにもかかわらず、後からアクリルスタンドや別商品の制作を希望する場合は、必ず追加の許諾が必要になります。

スケジュールに十分な余裕を確保する

版権キャラクターを用いたグッズや広告の制作では、デザインの事前承認や修正対応など、通常の商品開発より多くの工程が発生します。承認プロセスだけでも数週間〜1ヶ月以上かかることがあり、イベントやキャンペーンに合わせる場合は、逆算して余裕あるスケジュールを組むことが欠かせません。

缶バッジのように小ロット・短納期が可能な商品であっても、権利処理の工程は短縮できないため、早めの準備を心がけることが大切です。


版権キャラクターの販促・マーケティング活用例

版権キャラクターは、適切な許諾を得ることでさまざまな場面で活用できます。ここでは、企業が実際に行っている代表的な活用方法を紹介します。

キャンペーン景品・ノベルティへの活用

キャンペーン景品やノベルティとしてキャラクターを使用すると、集客力や話題性が高まり、プレゼント施策との相性も抜群です。

例として、マクドナルドの「ハッピーセット」では、人気アニメや映画と連動したおもちゃや絵本を提供しています。また、ローソンでも人気アニメとコラボした缶バッジやアクリルキーホルダーのプレゼントキャンペーンが頻繁に実施されています。

参考:
ハッピーセット 本・おもちゃ紹介 | ファミリー | マクドナルド公式
エンタメ・キャンペーン|ローソン公式サイト

限定コラボ商品の販売

キャラクターとのタイアップ商品は、ファン層への訴求力が高く、「限定」「コラボ」といった要素が購買意欲を強く刺激します。

飲料缶・ボトル、お菓子のスペシャルパッケージなどが代表例です。アパレル分野では、ユニクロ「UTコレクション」がキャラクターとのコラボTシャツを多数展開し、人気を集めています。

参考:UTコレクション TOP | ユニクロ公式

パッケージデザインへの活用

食品や日用品のパッケージにキャラクターを取り入れることで、特に子ども向け商品の指名買いにつながりやすく、高い販促効果を期待できます。

永谷園の「アンパンマン」シリーズはその代表例で、ふりかけ・カレー・スープなど幅広い商品でキャラクターデザインが活用されています。

参考:それいけ!アンパンマンシリーズ|商品ブランド|永谷園


emoji_objects キャラクターの魅力を生かした商品展開を

版権キャラクターは、その世界観や魅力を取り入れることで、商品やキャンペーンの訴求力を大きく高められる存在です。活用する際には、適切な許諾を得たうえで、権利者と連携しながら安全に取り組むことが大切です。

版権キャラクターグッズとして展開されるグッズにはさまざまなものがありますが、なかでも缶バッジは特に人気のアイテムです。低単価で多種展開しやすく、顧客にとっては手ごろな価格で楽しめるキャラクターグッズといえます。缶バッジを製作する場合は、内製にするとよりコストが抑えられ、デザイン展開もしやすいのでおすすめです。「バッジマンネット」では、高品質な缶バッジマシンや素材パーツを各種取りそろえています。缶バッジ製造の際には、ぜひバッジマンネットをご検討ください。

バッジマンネットでは、目的や用途に応じてさまざまなマシンやパーツを取り揃えています。バッジマンネットにて詳しくご紹介していますので、ご覧になったうえで、お気軽にお問い合わせください。