
缶バッジの製作において、デザインと同じくらい重要なのが「素材選び」です。缶バッジを構成する本体・用紙・フィルムにどんな素材を使うか、どう組み合わせるかによって、完成品の雰囲気や使い勝手は大きく変わります。
本記事では、缶バッジの外観の印象を左右する素材について、種類と特性を詳しく解説し、用途やデザインに応じたおすすめの組み合わせや選び方のポイントをご紹介します。
缶バッジの基本構造
初めに缶バッジの基本的な構造を確認しておきましょう。
本体
缶バッジの本体は、シェル(上蓋)・バックパーツ(下蓋)という2つのパーツで構成されています。シェルは金属製ですが、バックパーツは金属製またはプラスチック製のものがあります。
シェルの形状には、最も一般的な丸型のほか、楕円形・四角形・ひし形・ハート形・星形など、さまざまな種類があります。
バックパーツは、安全ピンタイプがよく知られていますが、クリップやキーホルダー、マグネット、ミラーなど用途に合わせてさまざまな種類があります。
多くの場合、これらはセットされた状態で販売されています。
缶バッジのバックパーツについては、「【缶バッジのピン選び】安全ピン・Zピン・代用パーツなどの種類と特徴」で詳しく解説しています。
デザイン面
シェルの上には、絵柄や文字などを印刷した紙が配置され、さらにその上を透明フィルムで覆う構成になっています。フィルムは紙を保護するだけでなく、光沢や質感を変化させ、見た目の印象を高める役割も持ちます。
また、製造方法によっては、フィルムに直接印刷を施したり、フィルムを使用せず紙に風合いを活かしたりする手法も見られます。
紙をフィルムで覆わない缶バッジについては、「紙の特徴を活かしたい! フィルムを使わない紙だけの缶バッジ」で紹介しています。
缶バッジの素材選びの重要性
缶バッジの製作において、素材選びは完成品の品質や印象を大きく左右する重要な要素です。
同じデザインデータを使用しても、本体・デザイン面の用紙・表面のフィルムの組み合わせによって、仕上がりの印象は大きく変化します。
例えば、アイドルグッズとして販売する缶バッジと、企業の販促品として配布する缶バッジでは、求められる品質やコストが異なります。
そのため、目的や用途に応じた適切な素材選びが重要です。
缶バッジの素材:本体(シェル)
缶バッジ本体を構成するシェルは、全体の質感や強度、見た目の印象に大きく関わります。主にブリキが使用されますが、ステンレスやアルミが採用される場合もあります。それぞれの素材の特徴について、具体的に解説します。
ブリキ
薄い鉄板に錫(すず)をメッキした素材です。
ブリキはコストパフォーマンスや加工性に優れ、印刷との相性も良いことから、最も一般的な素材として広く採用されています。
メッキによって適度な防錆効果が得られ、人体への安全性も高い点が特徴です。
ただし、メッキが剥がれた部分からサビが発生する可能性があるほか、衝撃によるへこみが起きやすいため、保管や取り扱いには注意が必要です。
ステンレス
鉄にクロムを混ぜた合金素材で、サビにくく耐久性に優れています。
また、高級感のある仕上がりになるため、長期使用や過酷な環境下での利用にも適しています。
一方で、硬度が高く加工が難しいこと、さらにブリキと比較してコストが高いため、大量生産には不向きとされています。
アルミ
軽量で加工しやすく、サビにくい特性を持つ素材です。そのため、持ち運びやすさを重視する用途には適しています。
ただし、他の素材に比べてコストが高いため、一般的な缶バッジ製作では採用例が少ないのが現状です。
シェルに利用される素材の比較表
| 素材 | サビにくさ | 加工しやすさ | コスト | 缶バッジへの適性 |
| ブリキ | 〇サビ防止のためメッキ加工がされている | ◎柔軟性があり加工が容易 | ◎低コスト | ◎最も広く採用 |
| ステンレス | ◎非常にサビにくい | △硬度が高く加工が困難 | △高コスト | △あまり採用されない |
| アルミ | ○サビにくい | ○比較的加工しやすい | ×非常に高コスト | △採用例は限定的 |
缶バッジのサビについては、「缶バッジがサビる原因とは?落とし方や予防のための対策・管理方法を解説」で詳しく解説しています。
缶バッジの素材:用紙
次にデザイン面で使われる用紙の種類とそれぞれの特徴を解説します。プリントの美しさにこだわるか、紙素材そのものを生かすのかによって、素材選びが変わってきます。
上質紙
ノートやコピー用紙として広く使われる、光沢のない標準的な用紙です。発色は落ち着いた色調で、ナチュラルで親しみやすい印象を与えます。
文字中心のデザインやシンプルなイラストに適しています。
半光沢紙
チラシや雑誌の写真ページに使用される、適度に艶のある用紙です。光沢紙ほど反射せず、発色の良さと見やすさが特徴です。
文字とビジュアルを併用したデザインに適しています。
マットコート紙
ハガキやカタログに多用される用紙で、マット質感に光沢を加えた仕上がりが特徴です。印刷部分に上品な艶が生まれ、写真やイラストを美しく表現できます。
販売用商品のような高品質な仕上がりを求める場合に適しています。
和紙
植物繊維を漉いて作られる伝統的な素材で、薄くても高い強度を持ちます。
独特の風合いと質感が魅力ですが、印刷適性は低いため、和紙そのものの美しさを生かすデザインに向いています。
クラフト紙
原料となる木材の色を残した、ざらざらした手触りが特徴的な紙です。印刷適性は低く写真表現には不向きですが、文字やロゴでは素朴で温かみのある表現ができます。
ナチュラル志向や環境配慮を訴求するデザインに効果的です。
缶バッジの素材:フィルム
フィルムは、デザインの劣化を防ぎ、長く美しい状態を保つために使用されます。圧着加工によって印刷された紙と一体化し、外部からの摩擦や水分を防ぐ役割を果たします。
缶バッジで使用される主なフィルムには、以下のような種類があります。
PET(ポリエチレンテレフタレート)
ペットボトルに代表される、日常的に多く使われている素材です。高い強度と透明度でデザインを鮮明に保護し、表面が滑らかで高級感のある仕上がりになります。耐熱性・耐溶剤性に優れ、長期保存にも適しています。
圧着工程に強く、写真やイラストなど平面的なデザインにも対応できることから、缶バッジ製作で最も広く採用されているフィルムです。
ホログラムフィルム
ホログラムフィルムは、PETといった基材に光の干渉を際立たせる微細な凹凸(シボ)加工を施したものです。さらに、シボ面にアルミ蒸着加工を加えることで、見る角度によって輝きが変化するキラキラとした模様が現れます。この効果により、立体感や発光感をデザインにプラスできるのが特徴です。
高い視認性と存在感があり、アイドルグッズ、アニメキャラクター、特別なイベント記念品など、他と差別化したい缶バッジに特に適した選択肢でしょう。
【用途別】缶バッジ素材の組み合わせ例
缶バッジの本体は、用途を問わずコスト・扱いやすさのバランスに優れたブリキが選ばれるケースが一般的です。ここでは用紙・フィルムに焦点をあて、用途別に素材の組み合わせ例を紹介します。
ノベルティ・販促品
- 用紙: 上質紙または半光沢紙
- フィルム: PET
ノベルティや販促品は、大量配布を前提としコストを抑えることが重要です。上質紙や半光沢紙は適度な発色と視認性を確保でき、企業ロゴやキャッチコピーなど文字情報を効果的に伝えられます。PETフィルムは耐久性に優れ、日常使用でも美しさを保ちます。コストパフォーマンスに優れた組み合わせの一例です。
記念イベント用グッズ
- 用紙: 半光沢紙またはマットコート紙
- フィルム: PETまたはホログラムフィルム
記念品としての特別感と視認性が求められます。半光沢紙やマットコート紙は発色が良く、イベントの雰囲気を鮮やかに表現できます。さらに特別感を演出したい場合は、ホログラムフィルムを使用することも効果的です。
販売用グッズ
- 用紙: マットコート紙
- フィルム: PETまたはホログラムフィルム
キャラクターやアイドルなどをモチーフにした商品の場合、見た目の美しさと耐久性の両立が求められます。マットコート紙+PETの組み合わせを基本とするとよいでしょう。さらに、特別感やコレクション性を高めたい場合には、ホログラムフィルムを用いて「限定仕様」として販売するのもおすすめです。
素材選びに加えて、印刷やデザインの工夫も缶バッジの仕上がりを大きく左右します。
缶バッジの素材選びで押さえるべき2つのポイント
1. 目的・用途を明確にする
缶バッジを製作する目的によって、求められる素材の組み合わせは変わります。企業の認知拡大を目指すノベルティならコスト重視、ファン向けの販売商品なら品質重視、イベントの記念品なら特別感の演出などが求められます。目的・用途を明確にしたうえで、品質とコストのバランスを考慮した素材選びを行うことが重要です。
2. デザインの特性を考慮する
デザインの特性に合わせて、用紙とフィルムの組み合わせを決めることが重要です。写真やイラスト重視なら発色の良いマットコート紙、特別感を演出するならホログラムフィルムなど、適切な素材を選ぶことで、デザインの魅力を最大限に引き出すことができます。
emoji_objects 選びでも雰囲気を変えられる缶バッジ
缶バッジは小さなアイテムですが、本体パーツ・用紙・フィルムといった素材の組み合わせによって、完成品の印象は大きく変わります。
それぞれの素材の特性を理解し、製作目的やデザインに応じて適切な組み合わせを選ぶことで、自社ならではの魅力的な缶バッジを製作することができます。
高品質な缶バッジをつくるには、信頼できる業者から適切なパーツを仕入れることが大切です。
「販促用にコストを抑えたい」「イベントで特別感を出したい」「ファンに長く愛されるグッズをつくりたい」、そんなニーズに応える缶バッジパーツをお探しなら、ぜひバッジマンネットをご活用ください。
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