
企業のマーケティングや営業企画の担当者にとって、ノベルティは顧客との接点を作る重要な販促ツールです。しかし、ノベルティ配布には景品表示法が関わってきます。「自社のノベルティ施策は法律上問題ないのか」「どこまでが許容範囲なのか」と不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、ノベルティ配布に関わる景品表示法の基本から上限金額、罰則規定まで、押さえておくべきポイントをわかりやすく解説します。最後には、法令を順守しつつ、マーケティング効果の高いノベルティを選ぶコツにも触れていきます。
景品表示法とは
景品表示法(正式名称 : 不当景品類及び不当表示防止法)は、消費者の利益を保護することを目的とした法律です。1962年に制定され、消費者庁が所管しています。略して「景表法」とも呼ばれます。
この法律が規制するのは主に2つの領域です。
- 不当表示の禁止
商品やサービスの品質・価格について、実際よりも著しく優良または有利であると誤認させる表示を禁止しています。 - 過大な景品類の提供の制限
過度な景品による顧客誘引を制限し、消費者が商品・サービスの内容や価格で適切に選択できる環境を守っています。
ノベルティ配布に関わるのは、この後者の「過大な景品類の提供の制限」です。
限度額を超える過大な景品類の提供を行ったと認められる場合、消費者庁から景品の提供を制限・禁止される可能性があります。
参考:景品表示法 | 消費者庁
景品表示法の規制対象となるノベルティとは
すべてのノベルティが景品表示法の規制を受けるわけではありません。規制対象となるのは、法律が定める「景品類」に該当する場合のみです。
「景品類」と判断される3つの要件
景品表示法では、次の3要件をすべて満たすものを「景品類」と定義しています。
- 顧客を誘引する目的がある
商品・サービスの購入や来店を促す目的で提供されること - 取引に付随して提供される
商品の購入やサービス利用に伴って提供されること - 経済的な利益がある
提供を受ける側が通常、経済的対価を支払って取得すると認められるもの
これら3つすべてを満たした場合、「景品類」として規制対象となり、提供金額に上限が設けられます。
上限金額については、次のセクションで解説します。
規制対象になるか否かの判断基準
最も重要なポイントは、「取引に付随しているか」です。具体例で確認しましょう。
【規制対象となる例】
- 商品購入者に○○円相当のグッズをプレゼント
- 資料請求や会員登録した方に特典を提供
- サービス契約者全員にノベルティを配布
「購入」「登録」「契約」といった取引条件があるため、景品表示法の規制を受けます。
【規制対象外となる例】
- 展示会や街頭での無償配布
- 自社イベントでの自由配布グッズ
誰でも条件なく受け取れるもので「取引」が伴わないため、規制の対象外です。
このように、商品購入や契約などの条件がなく配布されるノベルティは、景品類に該当しない場合があります。自社のノベルティ施策を検討する際は、まず取引に付随しているかを確認しましょう。
景品類に該当するノベルティの上限金額
配布するノベルティが景品類に該当する場合、提供方法によって3つに区分され、それぞれ異なる上限金額が定められています。
| 区分 | 内容 | 上限金額 |
| 総付景品 | 条件を満たす全員に提供 | 取引価額1,000円未満:200円まで取引価額1,000円以上:取引価額の20% まで |
| 一般懸賞 | 抽選等で一部の人に提供 | 取引価額5,000円未満:取引価額の20倍まで取引価額5,000円以上:10万円まで※いずれも売上予定総額の2% まで |
| 共同懸賞 | 複数事業者が共同実施 | 最高額:30万円まで総額:売上予定総額の3% まで |
※上限金額とは、提供単位ごと(1人あたり・1個あたり)に適用される景品価額の上限を意味しています。
総付景品(そうづけけいひん)
商品・サービスの購入者や来店者など、一定の条件を満たす全員に提供される景品です。
【具体例】
商品購入者全員へのプレゼント、来店した全員への配布グッズ、会員登録者全員への特典
【上限金額】
- 取引価額1,000円未満:200円まで
- 取引価額1,000円以上:取引価額の20% まで
例えば、3,000円の商品を購入した全員に配布するノベルティの場合、景品の価額は600円(3,000円×20% )までとなります。
一般懸賞
抽選や競技などで、一部の人だけに景品を提供する場合です。
【具体例】
購入者の中から抽選で当たる賞品、クイズやゲームの勝者への景品、SNSキャンペーンの当選者へのギフト
【上限金額】
- 取引価額5,000円未満:取引価額の20倍まで
- 取引価額5,000円以上:10万円まで
いずれの場合も懸賞に関わる売上予定総額の2%まで
例えば、1,000円の商品購入者対象の抽選キャンペーンの場合、景品の上限は20,000円(1,000円×20倍)となります。ただし、売上予定総額が200万円なら、景品総額は4万円(200万円×2%)が上限です。
共同懸賞
複数の事業者が共同で実施する懸賞です。
商店街のスタンプラリーや複数店舗が参加するキャンペーンなどが典型例です。
【具体例】
商店街のスタンプラリーの賞品、ショッピングモール全体の抽選会景品、複数店舗が参加する合同キャンペーンの賞品
【上限金額】
- 最高額:30万円まで
- 総額:懸賞に関わる売上予定総額の3%まで
例えば、売上予定総額が1,000万円の商店街スタンプラリーの場合、最高額30万円、景品総額30万円(1,000万円×3% )までとなります。一般懸賞よりより高額な景品を提供できる点が特徴です。
ノベルティ配布で景品表示法に違反した場合
ノベルティ配布について過大な景品類の提供が疑われると、消費者庁または都道府県による調査が開始されます。調査の過程では、事業者に対して報告要求や事情聴取、立入検査が行われることがあります。その後、違反が認められた場合は以下のような措置が取られます。
参考:景品表示法違反行為を行った場合はどうなるのでしょうか? | 消費者庁
措置命令
消費者庁または都道府県から発せられる最も基本的な行政処分です。
消違反行為の差し止めや再発防止策の実施、一般消費者への周知などを命じられます。措置命令の内容は、違反の内容、命令の具体的内容、事業者名とともに消費者庁のWebサイトで公表されます。この公表により、企業の社会的信用が大きく損なわれる可能性があります。
なお、ノベルティなどに関係する「過大な景品類の提供」には課徴金は科されません。課徴金制度の対象となるのは「不当表示」のみです。
確約手続
確約手続は、景品表示法の改正により2024年10月から新たに導入された制度です。違反の疑いがある場合に、事業者が自主的に違反状態の是正や再発防止策を盛り込んだ計画(確約計画)を策定し、消費者庁長官の認定を受けることで、措置命令を回避できる仕組みです。
確約計画が認定されると、事業者名や違反の疑いに関する概要などが公表されますが、その際には「違反を認定したものではない」という注記が付されます。
ただし、計画通りに是正措置が実施されない場合や、虚偽・不正な事実に基づいて認定を受けた場合は、認定が取り消される可能性があります。
参考:【令和6年10月1日施行】改正景品表示法の概要|消費者庁[PDF]
刑事罰
過大な景品提供行為そのものに対する刑事罰ではありません。しかし、消費者庁からの報告要求違反・虚偽報告、立入検査の拒否・妨害については、1年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されます。これらは違反行為を行った個人だけでなく、事業者に対しても罰金が科される両罰規定となっています。
景品表示法違反被疑事件の調査の手順

景表法を守りながら効果的なノベルティを選ぶコツ
景品表示法の規定を守りながら、印象に残り、マーケティング効果の高いノベルティを選ぶことは十分可能です。ここでは、効果的なノベルティを選ぶコツを解説します。
実用性の高いノベルティを選ぶ
普段使いできる文具やエコバッグ、スマホ関連グッズなどは、低単価でも受け取られやすく、長く使われる傾向があります。繰り返し使われることで、自然とブランドの接触回数が増え、認知効果が高まります。
【実用性の高いノベルティの例】
- エコバッグ
- モバイルグッズ(スマホスタンド、充電ケーブルなど)
- 文具(ボールペン、付せん、ノートなど)
- 日用品(タオル、マグカップなど)
ノベルティの限定感を活用する
数量限定や期間限定といった「限定感」は、ノベルティの希少価値を高め、「今受け取らないと手に入らない」という心理を引き出します。
【限定感を演出するアイデア】
- 「先着○○名様限定」
- 「期間限定デザイン」
- 「○○周年記念モデル」
ノベルティのデザイン性で印象づける
ブランドイメージと統一されたデザインや、シーズンごとの特別仕様などは、受け取った後も長く記憶に残りやすくなるでしょう。「もらってうれしい」「誰かに見せたくなる」と感じさせるデザインを意識することが大切です。
【記憶に残るノベルティのアイデア】
- シーズナルデザイン:
季節やイベントに合わせた期間限定デザイン - シリーズ展開:
缶バッジやステッカーなど、複数デザインをコレクションしやすいアイテム展開 - ブランドカラーの活用:
企業の世界観を印象づける統一感のあるデザイン・配色
企業ノベルティのアイデアは、「企業の販売活動を促進する面白いノベルティの事例を紹介」で詳しく解説しています。
emoji_objects 景品表示法を守りながら効果的なノベルティ施策を
ノベルティ配布は効果的なマーケティング手法ですが、景品表示法による規制を正しく理解することが不可欠です。重要なポイントは、配布するノベルティが「景品類」に該当するかどうかの判断です。取引に付随して提供される場合は規制対象となり、配布方法によってそれぞれ上限金額が定められています。
景品表示法の制約は一見厳しく感じられるかもしれませんが、その範囲内でも実用性やデザイン性を工夫することで、十分に効果的なノベルティを展開できます。景表法を正しく理解したうえで、自社らしさを生かしたノベルティ施策を実施することが重要です。
デザインアレンジの幅が広い缶バッジは、印象に残りやすいノベルティとして活用できます。露出効果が高いうえに比較的低価格で注文でき、場合によっては自社での内製化も検討できます。
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